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メモリの価格が下がらない理由

時事
[PR] au ひかり

2018年6月29日

2017年から続く DRAMメモリー価格の高騰は、スマートフォンやタブレット需要の拡大、さらには仮想通貨マイニングの影響など、さまざまな要因が取り沙汰されてきた。しかし、その背景は単なる需要増だけでは説明しきれない。

寡占市場

最大の要因として指摘されるのが、市場構造の問題だ。現在、DRAM を量産できる主要メーカーは、韓国のサムスン電子SKハイニックス、そして米マイクロン・テクノロジーの3社にほぼ限られている。事実上の寡占状態にあるこの市場では、供給の動向が価格に直結する。

2018年5月、この3社は米カリフォルニア州で価格操作の疑いにより集団訴訟を提起され、中国当局からも調査対象となった。DRAMの供給を意図的に抑制し、価格カルテルを形成しているのではないかという疑念である。実際、各社の業績は2016年中頃から急激に伸びており、市場の過熱ぶりを裏付けている。

TecRepublic – Samsung, Hynix, Micron sued for DRAM price fixing that could have raised PC prices

高まる IT インフラ需要

一方で、需要構造の変化も無視できない。近年はクラウドサービスの拡大に伴うサーバー投資の増加や、ディープラーニング・AI研究の進展によって、高性能メモリーの需要が急速に高まっている。特にデータセンター向けやGPU用途で用いられる高付加価値メモリー(HBM2など)は、従来のPC向け DDR4 メモリーよりも利益率が高く、メーカー側は生産リソースを優先的に振り向ける傾向にある。

DRAMは基本的に同一のシリコンウェーハから製造されるため、生産ラインの配分はゼロサムだ。結果として、一般消費者向けの PC用メモリーは後回しにされやすく、価格上昇の一因となっている。

かつて半導体産業は「作れば作るほど利益が出にくい」とも言われたが、供給側が集約された現在では事情が大きく異なる。供給の絞り込みが市場価格に直接影響を与える構造が生まれているのだ。

足元では価格はわずかながら下落傾向にあるものの、依然として高値圏にある。2年前には高品質な8GB×2枚組のメモリーが8000円台で購入できたことを踏まえれば、今回の価格上昇がいかに急激であったかは明らかだ。

今後どうなるのか

短期的には、大幅な値下がりは期待しにくい。DRAMの増産には新規設備投資だけで数千億円規模のコストが必要であり、製造ラインの立ち上げにも長い時間を要する。需要の急増に対して、供給側が即座に対応できる産業ではないからだ。

さらに、主要3社にとって現在の価格水準は極めて収益性が高い。市場原理だけを見れば、供給を急拡大して価格競争を再燃させるインセンティブは乏しい。過去、 DRAM業界は熾烈な価格競争の末に多くのメーカーが撤退や統合を余儀なくされてきた。その歴史を踏まえれば、各社が慎重な増産姿勢を崩さないのも当然だろう。

ただし、中長期的には状況が変化する可能性もある。

中国政府は半導体の国産化を国家戦略として掲げており、 DRAM 分野への巨額投資を進めている。技術的なハードルは極めて高く、短期間で既存3社に並ぶのは難しいものの、新規プレイヤーの参入が実現すれば、現在の寡占構造に風穴を開ける可能性はある。

また、PC市場そのものの需要鈍化も価格を押し下げる要因となりうる。仮想通貨ブームが沈静化し、データセンター投資が一巡すれば、需給バランスは徐々に正常化へ向かうはずだ。

消費者としては、どうしても必要な場合を除き、今は無理に大容量メモリーへ買い替えるタイミングではないかもしれない。特に自作PCユーザーにとっては悩ましい時期だが、市場が落ち着くまで様子を見るという判断も十分合理的だ。

半導体は現代のあらゆる電子機器を支える基盤であり、その価格変動はPCパーツ市場だけの問題ではない。今回のDRAM高騰は、グローバルな半導体供給網がいかに脆く、そして少数企業に依存しているかを改めて浮き彫りにしたと言えるだろう。


追記:2018年9月22日

サムスンがメモリ減産を計画、価格を「安定」させる狙い
2018年9月22日先日、 Samsung の関係者が DRAM の生産を制限することを計画していると報道関係者に漏らした。ブルームバーグによれば、サムスンは「需要の低下が予想されるので来年メモリチップの出荷量を減らす」ことを予定しているら…

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