まえがき
憲法に規定されてるとおり我々は自然権としてなんでも言える自由はある。差別的表現、侮辱的表現、扇動的表現も自由の範囲内である。が、それは「公共の福祉」により正当化できる範囲に限れ、立法により制限される可能性もある。
まあつまりは差別する自由はあるけどそれを表に出した途端いろいろな制裁を受ける可能性がある。
なんでも自由に認めたら社会が混乱するから公の場ではやめとけということ。
基本的人権
日本国在住の人間は憲法13、14、24条に規定されたいわゆる平等権があり、差別する自由は法によって制限される。多くの場合は表現の自由よりも公共の福祉のために平等権が優先される。
在留外国人の人権
よく在留外国人は日本国憲法の庇護下にはないので人権もないと語る自称有識者がいるが、これは完全なる間違いである。
日本国憲法 第十四条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
この条文では「(日本国籍を持つ人間)国民」のみに保障されるかのように見えるが、合理的な理由がない限りその範囲は日本在住の外国人も含む。1978年に出されたマクリーン事件を巡り、最高裁判所が出した判決がこれを裏付けている。
1978年 マクリーン事件、最高裁判所判決
「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、我が国の政治的意志決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ」
日本国憲法の基礎知識 :マクリーン事件-昭和53年10月4日最高裁判決
あくまで在留資格認定された枠内での話だが、参政権や選挙権など、日本国民固有とする権利を除き、平等に権利を保障するとした内容だ。限定的ではあるが政治的活動も認めるとする判決である。
法務省がヘイトスピーチの具体例を掲載
よくなんでもヘイト認定されるからなんにも言えねぇ……とかTwitterで書き込んでいる人を見かける。日本においてヘイトスピーチはなんなのかは法務省がちゃんと示してくれている。
(1)特定の民族や国籍の人々を,合理的な理由なく,一律に排除・排斥することをあおり立てるもの(「○○人は出て行け」,「祖国へ帰れ」など)
(2)特定の民族や国籍に属する人々に対して危害を加えるとするもの (「○○人は殺せ」「○○人は海に投げ込め」など)
(3)特定の国や地域の出身である人を,著しく見下すような内容のもの(特定の国の出身者を,差別的な意味合いで昆虫や動物に例えるものなど)
法務省 ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動 – www.moj.go.jp
トラブルに巻き込まれないためには
最近流行りのポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)という言葉の意味を調べればわかるが、何が正しい言葉か、ヘイトスピーチに当たるかは政治的に決まる。その時代に何が起きたか、政治の場で何が問題となっているかなど、やってはいけないこと、批判される表現が決まってくるのだ。普段からニュースや新聞を見ている人ならば大体どんなものが問題になるかわかるはずだ。言い換えれば空気読めよ、ということだ。政治的発言をしたいのならば最低限の知識を身に着け、アンテナを高く張って政治や世論に敏感でなくてはならないと私は思う。
「ポリコレ疲れ」が起きている?
日本だと何が差別表現に当たるのかわからない人や自治体が多すぎて法務省で具体例が上げることとなった。よく日本でもポリコレ疲れなるものが起きてるという人がいるが、逆だ。
90年台や00年代にこういうことがあったろうか。国内の特定の地域出身者に対する差別はあったが、否だ。ネットの普及で掲示板やまとめブログなどを中心に外国人に対するヘイトが蔓延し、実社会に漏れ出してヘイトスピーチを積極的に行う団体まで出現。法規制される事態となったから多くの人が困惑しているのが現状なのだ。
長年人種差別が大きな国内問題となって活発に議論されてきた多民族国家の米国とはわけが違う。
最後に筆者は政府による表現規制には反対の立場である。しかしネットから決壊したヘイトが現実になだれ込んでくることになった場合、罰則化される危険性は十分にある。
Photo by Redd Angelo on Unsplash
おわり
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ヘイト=政治