Red Hat が LibreOffice RPM 廃止を計画。Flatpak に移行の動き徐々に進行か

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Red Hat と GNOME のデベロッパーの一人である「Matthias Clasen(マタイアス・クラセン)氏」は LibreOffice を将来的には RPM 版を廃止し、 Flatpak 版のみになることをメーリングリストで報告した。これが結構な議論を巻き起こしている。

Fedora や Red Hat Enterprise Linux (RHEL)において、 LibreOffice の RPM パッケージは Red Hat のディスプレイシステム・チームによってメンテナンスされてきたが、現在 LibreOffice の RPM パッケージとその依存パッケージは ”孤児”状態で専門にメンテを行っている人がいない状態らしい。

なぜこのようなことが起きたのか

もともと Red Hat で LibreOffice のメンテナーを行っていた人は二名しかおらず、メインコントリビューター「Caolan McNamara (マクナマラ)氏」は今年 Red Hat を退職し Collabora に転職した。彼は「The Document Foundation」の創設に携わった一人であり、長年 LibreOffice の開発に従事してきた。 Collabora でも引き続き LibreOffice の開発を行うようだが、 Red Hat のパッケージをメンテナンスするという煩わしい仕事が一つ減って本来の仕事に専念する感じではないだろうか。ということでメンテナンスをしていた主要人物がいなくなったので RPM の管理難しくなった。

それに 米Red Hat は先月(2023年5月)に約700人もの人員削減を行った。Red Hat は好調なのだが親会社の IBM が苦境の中、遊ばせておく資金はなく選択と集中をせざる得なくなっているようだ。

もちろん、コミュニティが RPM の管理を行うという手もある。実際に何人か手を上げたが実現性は薄いと思う。LibreOffice は巨大なパッケージ群をもつオフィススイートなのでコンパイルするだけでも膨大な時間がかかる。さらにパッケージの依存関係を把握したり、パッチをバックポートしたり、バグフィックスしたり x86 以外のアーキテクチャに対するサポートも必要だ。これを毎週のように行わなければいけない。

Linuxデスクトップにとって良い影響か

Flatpak に移行することでパッケージの管理を本家「The Document Foundation」グループに一任することができる。知らない人は少ないと思うが RHEL LibreOffice の Flatpak パッケージは現在でも The Document Foundation から供給されているものだ。LibreOffice もこれを公式のインストール方法として奨めている。

Red Hat は LibreOffice の RPM パッケージのメンテナンスをやめる代わりに、ワークステーションユーザにとって重要な Wayland や HDR(High Dynamic Range) 、カラーマネージメントシステムに開発を注力するようだ。

現在、Linux では X11 をいじくり回して色補正などを少々できるが Wayland において HDR 関連のタスクをすることは不可能だ。この部分が改善したら Linux デスクトップユーザにとって大きな恩恵となるのではないだろうか。

悪影響は?

メーリングリストに切実な要望もあった。

中略

私の顧客企業の中で少なくとも4名が LibreOffice をバックエンドのヘッドレス環境でファイル変換に使っている人がいます。金融機関でエンドユーザがウェブサイトにアップロードしたファイルを変換するのに使ったり、また病院や診療所の健康管理システムに組み込まれていることを見たことがあります。

今後の戦略を変更してほしいということではなく、変化によって生じる挑戦を知ってほしかったのです。EPEL 内 の RPM をパッケージングすることで RHEL 10 を使っている顧客の苦痛を軽減することができます。

https://lists.fedoraproject.org/archives/list/devel@lists.fedoraproject.org/thread/46ZZ6GZ2W3G4OJYX3BIWTAW75H37TVW6/

このように LibreOffice の RPM 版に依存しているユーザも少ないがいるようだ。

しかし、これは代替となるサービス、例えば先程のマクナマラ氏の転職先が提供している Collabora Online で割と簡単に置き換えることもできる。

一方でデスクトップユーザからもこの動きを批判する人も多くいたが Windows のように肥え太ったシステムになってしまうのではないかという曖昧なものが多かった。ご心配はもっともだが、それが Linux デスクトップの進化を遅らせてしまうよりはマシと筆者は考える。

Red Hat は IBM に買収されてから何かと叩かれがちだが、 Linux の発展において大きな貢献を行ってきた。世の中 OSS にタダ乗りしていて何も貢献しないような企業が多く、フルタイムの OSS エンジニアを雇っている企業は少ない。彼らには無駄にする時間などないのだ。

それに Flatpak に移行するのはデスクトップアプリケーションだけであり、 Linux の核となるパッケージらはそのままだ。今後 Flatpak に完全移行するアプリケーションの候補といったら、Firefox や GIMP、Blender などだろう。

RPM 版はすぐにはなくならない

Fedora に関してはわからないが、すくなくとも RHEL 7〜9 までは引き続きサポートしていくとのことなので、それこそ 2030年 くらいまで RPM 版はなくならないと思われる。なので RHEL を利用している顧客はビビり散らかさなくても良い。

RPM が廃止されるころには Flatpak のほとんどの問題が片付いているとおもわれる。 Flatpak は通常のパッケージに比べて容量とメモリを多く専有するのが問題だが、2030年ともなるとより高速かつ大容量なハードウェアが登場していることだろう。

まあどっちにしろ RHEL 8 のアップストリームは結構とっちらかっているため、 Flatpak を利用するほうが環境が安定したりする。最近の RHEL を使い慣れている人ならば抵抗は少ないのではないだろうか。

他のディストリビューションもあとを続くのか

OSS プロジェクトは巨大化し、プログラムも複雑化しているためディストリビューションのメンテナーの負担も日々増えている。コンテナ型のパッケージシステムの登場により、特にデスクトップアプリケーションについてはすべてのディストリビューションがすべてのパッケージをパッケージングし直すことの意義が薄れているのではないかと考える。

systemd しかり Wayland しかり Linux コミュニティにおいての変化は様々な議論を重ねられながら、ゆっくりと、10年くらいの単位で移行していっている。 Flatpak が登場してからすでに7年も経過している。開発者やメンテナーの負担を減らすため、徐々にだがコンテナ型にシフトしていくのではないかと予想している。

また蛇足だが Linux ゲーミングにおいては今後互換性を維持するために、このコンテナ機能は絶対に必要なものとなるため、より一層の発展が望まれる。現にほとんどのメジャーな Linux ネイティブな OSS ゲームは Flatpak にパッケージを発行している。

おわり

Image by THAM YUAN YUAN from Pixabay

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