ThinkPad T14s Gen 6 の Snapdragon 搭載モデルをメーカー様より貸与していただいたのでレビューしていきます。
ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragon の外観


外観は普通の ThinkPad X1 そのもので Snapdragon のステッカーを見るまでこれが ARMプロセッサ搭載機とは気づかないでしょう。

側面の各ポート構成も X1 と同じです。

ヒンジは180度まで可動できます。

ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragon の特徴とスペック
特徴
本機は ThinkPad の頑丈で軽量、使いやすいインターフェイスに加え、 ARM プロセッサーの低消費電力が組み合わさっているのが特徴です。
スペック
● プロセッサー
| CPU | ・Snapdragon® X Elite X1E-78-100 ・Snapdragon® X Plus X1P-42-100 |
| メモリー DRAM | 32GB / 64GB |
| メモリースロット | – |
| ストレージ | 256GB / 512GB / 1TB SSD |
| 画面サイズ | 14 インチ |
| グラフィックス(GPU) | CPU内蔵(Qualcomm® Adreno™ GPU) |
● ディスプレイ
| 画面サイズ | 14型 |
| アスペクト比 | 16 : 10 |
| ディスプレイオプション | ・OLED 2.8K(2880 x 1800) ・IPS液晶 WUXGA(1920 x 1200) 光沢なし ・IPS液晶 WUXGA(1920 x 1200) タッチ 光沢なし |
● その他
| インターフェース | ・USB4 (Video-out 対応) x 2 ・USB 3.2 Gen 1 (Powered USB) x 1 ・USB 3.2 Gen 1 x 1 ・HDMI ・マイクロホン/ヘッドホン・コンボ・ジャック |
| カメラ | インカメラ: 全てプライバシーシャッター付き FHD 1080p +IRカメラ MIPI 人感検知機能付き |
| バッテリー | 3セル Li-Po 58Whr |
| 稼働時間 | 最大 JEITA測定法 3.0:動画再生時 約19.3時間・アイドル時 約37.4時間 |
| 本体寸法(幅×奥行き×高さ) | 約 313.6 x 219.4 x 16.9mm |
| 重量 | 本体 : 約 1.24 kg~ バッテリー : 約 260 g |
● 価格 (直販モデル)2025年11月28日時点
| 最小スペック | ¥ 190,630 |
| 最大スペック (X Eite + DRAM 64GB + 1TB SSD + 2.8K OLED) | ¥ 332,574 |
ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragon の性能検証
貸し出して頂いたレビューユニットは以下の構成です
| OS ver. | Microsoft Windows 11 Pro (ver.10.0.26100 Build 26100) |
| CPU | Snapdragon X Elite X1E-78-100 (12core) |
| 内蔵GPU | Qualcomm Oryon (Adreno X1-85) 3.42 GHz |
| NPU | 45 TOPS |
| DRAM | 32 GB |
| ストレージ | 512GB SSD |
パフォーマンス
レビュー機に搭載されている「X1E-78-100」は X Elite シリーズの下位チップです。多くのベンチマークサイトでは AMD Ryzen 7 7840U と同等のスコアを出しています。また Apple M3 10 GPU コア搭載型と同等のパフォーマンスと言われています。
超高性能とは言えませんが、ほとんどのタスクはストレスなく処理することができます。

一方、内蔵 GPU 「Adreno X1-85」は 3.42 TFLOPS と近年の他社内蔵GPUのエントリーモデルよりも劣るものとなっています。2020年発売の Iris Xe 96 EUs よりもやや高いパフォーマンスを発揮しますが、近年の3Dリッチなゲームは高画質でプレイするのは難しいです。
ベンチマーク
セキュリティソフトは Micosoft Defender を動作させています。なるべく公平な条件でベンチマークを走らせていますが、測定時期が違うだめ Windows のバージョンが異なる場合があります。
7-Zip ベンチマーク
このベンチマークは単に CPU の処理性能を図るだけでなく、ストレージの性能も関係してきます。

ThinkPad T14s SnapDragon は仮想CPU環境で動作しているにもかかわらず、Intel 製の高性能 CPU を大きく上回るスコアを叩き出しました。
CineBench R23
純粋なCPUのパフォーマンスを図るベンチマークです。

こちらのベンチマークは相性が悪かったのか、かなり苦戦しました。他のサイト様のレビューではマルチコアのスコアが9000台を上回っているものもありましたが、シングルコア性能は他と変わらず低いです。
ゲーミング性能
FINAL FANTASY XIV 〜黄金のレガシー〜

FFXIV は快適にプレイできました。
しかし、ベンチマークでは最低フレームレートがかなり低く、不安定な結果となりました。やはり仮想環境での動作が影響しているのかもしれません。
ストリートファイター6 ベンチマーク

SF6 ベンチマークでは対戦画面で平均フレームレート30をギリギリ出していますが、ベンチマークツールは「動作困難」と判定してしまいました。こちらも仮想環境での動作。
Copilot+ PCの実力は?
本機に搭載されている Snapdragon X シリーズの特徴の一つが「Copilot+」と言われています。
Copilot+ PC とは、マイクロソフトが提唱する「AI処理を高速に行えるPC」のことを指します。CPUにAI処理に特化した NPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット) を搭載している点が最大の特徴です。ただし現時点では対応するAIプログラムが限られており、利用できるのはほぼマイクロソフト純正のツールに限られています。
実際にこれらのツールを試してみましたが、正直なところ“おもちゃ感”が拭えませんでした。たとえばAI画像生成ツールでは、犬の写真を作らせると左右で目の色が違っていたり、影のつき方が不自然だったりと、実用的とは言いがたい結果が多く得られました。原因は、おそらく搭載されているAIモデルの規模が小さいためでしょう。インカメの背景切り抜き機能や翻訳機能も試しましたが特別使い続けたいと思えるものはありませんでした。
また、NPUの搭載によって特定のAI処理ではCPU負荷が30~50%ほど軽減されるとのことですが、実際に使ってみるとファンの回転音が大きくなり、快適さを感じる場面は多くありませんでした。ないよりは良い、という程度で、現時点では大きなメリットを体感することはできませんでした。
ソフトウェアのARM対応状況
海外のサイトになってしまいますが、Windows ソフトウェアで ARM への対応状況をリストアップしてくれているサイトがあります。
Adobe 製品は半数ほどARMネイティブで動きますが、 Adobe Premiere Pro、Acrobat、Light Room などはエミュレート環境での動作となるため、動作が遅いです。また After Effects は動作しません。
しかし、徐々に対応する製品が増えており、すべてネイティブで動くようになるのも時間の問題でしょう。
バッテリー性能
本機は 58 WHr のバッテリーを搭載しています。一般的な 14インチノートと同等の容量ですが、低消費電力のプロセッサー、ARMチップで駆動しているので格段に連続稼働時間は長いです。
ベンチマークソフトウェア Passmark の 「Battery Life Test」を実施、輝度 40%の状態で連続ビデオ再生時間を測定し、 22時間51分という結果になりました。
電子情報技術産業協会が定めた JEITA 3.0 という測定法では 動画再生時 約19.3時間・アイドル時 約37.4時間と公表されています。(ディスプレイ輝度 200 nits )
| 機種名 | プロセッサー | 動画再生時間 | アイドル時 |
|---|---|---|---|
| T14s Gen 6 Snapdragon | X1E-78-100 | 19.3 | 37.4 |
| X1 Carbon Gen 13 | Ultra 5 225U | 15.5 | 35.6 |
T14s Snapdragon は通常の X1 Carbon と比べ、約1.2倍のバッテリー駆動時間を実現しています。
ディスプレイ性能と種類
ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragon は以下の3つの中からパネルを選択することができます。
| パネル | 解像度 | 明るさ | タッチ対応 | 表面処理 | リフレッシュレート | 色域 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| OLED | 2880 x 1800 | 400 nit | – | 非光沢 | 120 Hz | 100% DCI-P3 |
| IPS | 1920 x 1200 | 400 nit | ◯(10点) | 非光沢 | 60 Hz | 45% NTSC |
| IPS | 1920 x 1200 | 400 nit | – | 非光沢 | 60 Hz | 100% sRGB |
貸出機はタッチなしのIPSパネルですが、発色もキレイで視野角も広く、見やすいです。

キーボード、入力デバイス
キーの中央が僅かに内側にシリンドリカルタイプです。他の ThinkPad シリーズ同様キーピッチが深めで打鍵感が良く、非常に打ちやすいキーボードです。
ただ、右側の記号や特殊キーがやや小さめに作られているので慣れるまでタイプミスするかもしれません。

キートップは二色成型なので、文字が摩耗して消えることはありません。
キーボードのバックライトも点灯可能で三段階まで調整できます。

トラックポイントも健在です。

トラックポイント用に3つのボタンがトラックパッド上部に配置されています。
このためトラックパッドがやや小さいと感じる方もおられるかもしれません。

端子、アクセスポートの種類
各種ポート、端子も通常の ThinkPad X1 と同じです。フルサイズの HDMI ポートと USB-A ポートが搭載されているのが大変ありがたいです。

・USB 3.2 Gen 1 (Powered USB) x 1
・USB 3.2 Gen 1 x 1

・USB4 (Video-out 対応) x 2
・HDMI
・マイクロホン/ヘッドホン・コンボ・ジャック
サウンドシステム
キーボードの両側にあるスピーカーは少しだけ空洞っぽさはありますが、予想以上に低音が効いていて、高音や中音もクリアで聞き取りやすいです。

Dolby Access ソフトでは、ゲーム・映画・音楽・音声用のプリセットが用意されており、イコライザーを細かく調整することもできます。
拡張性
本機で自力で換装できるパーツは NVMe SSD と バッテリーのみです。
DRAM メモリーは LPDDR5X-8533MHz 32 GB か 64 GB 容量を選べますが、はんだで直付けされているので換装することはできません。Wi-Fi ユニットもはんだ付けされています。
内部にアクセスするには本体を裏返し、フィリップスネジ5つを緩め、嵌合部分をプラスチックプライヤーやギターピックで外していきます。
内部構造は x86 チップ搭載機に比べ、随分とシンプルな構造です。下のシャーシ部分がだいぶ見えてしまうくらい基盤は小さいです。

APU+GPU ヒートスプレッダーの上にはマイラーシートが貼られています。
冷却ファンは1基のみで下のシャーシ部分が見えてしまうほど基盤も小さいです。
58 Wh バッテリーを搭載、左右に衝撃吸収用のダンパーが装備されています。3つのネジとリボンケーブルを外せば簡単に取り外すことができます。内部構造的にまだまだ余裕がありそうなのでもっと大型のバッテリーを搭載できそうです。
2242 Gen 4 SSD スロットが一つあります。このスロットは銅板で保護されており、さらにサーマルパッドが貼ってあります。
価格
ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragon は法人向けということで定価ではとんでもなく高いです。「X Elite」搭載モデルで ¥ 442,310 、「X Plus」で ¥ 314,710 です。
しかし、Lenovo製品は販売開始してから割とすぐに大幅な値下げをします。2025年10日現在、直販で一番安い X Eliteモデルは ¥254,056、X Plusモデルは ¥190,630 です。
競合となる製品としては「DELL Latitude 5455」や「HP EliteBook Ultra AI PC」といったところでしよう。それらと比較しても最安です。
まとめ
ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragon は、 ARM アーキテクチャのプロセッサを搭載しているので旧来の X86 プロセッサーとは一線を画す省エネ性能です。X86-64向けのソフトウェアの動作は仮想環境にもかかわらず、思ったよりもスムーズに動作しました。
また Snapdragon 搭載ノートPCとしては最安の部類です。省エネ性能だけでなく、頑丈で質感が良くハードウェアの質はかなり高いです。特殊なソフトウェアを使わず、ウェブブラウジングや文章作成などの一般的なタスクのみ行うのであればかなり有力な選択肢となるでしょう。。
ただARMアーキテクチャに対応していないソフトウェアもあり、思ってたようなパフォーマンスを発揮できないという事態が発生するかもしれせん。購入前にソフトウェアの対応状況をよく確認する必要があります。
おわり


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