アシダ音響さんのオンイヤーヘッドホン「ASHIDAVOX ST-90-05」にひとめぼれし、ネットで評判を調べてみたら異様に高評価だったので即買いしました。早速レビューしていきます。
この記事は筆者の財布の提供でお送りいたします。
TL;DR:作りは優秀だが音のクセが強い
ASHIDAVOX ST-90-05 は、軽量かつ堅牢な作りが魅力の国産ヘッドホンです。
一方、音がこもっていて低音が非常に強調されており、高音が雑なためクセがあって人(曲)を選びます。音漏れが少なく軽量で丈夫なため携帯性は良好。デザインもレトロチックでかわいいので首に引っ提げてお出かけするのも良いでしょう。
デザイン:レトロでかわいい
外見は昔の図書館においてそうな形のヘッドホンです。この古臭いデザインが実に良い味を出しています。
一切無駄を削ぎ落としたかのような見た目ですが、質感はなかなかのものです。
要所要所でちゃんと金属が使われているので手に取ってみると案外安っぽさを感じません。

ハウジングも無骨です。ベントホールなどは一切ないため耳に密着させると音漏れがかなり少ないです。

ハウジングとバンドとのジョイントも少し動くので頭や耳の形状にあわせて多少の融通が利きます。

ヘッドバンドも頑丈です。かなり力がいりますが自分の頭の形に合わせて少し成形することができます。

聞くところによると医療用・業務用のケーブルが使われてるようで分厚く滅多なことでは断線しそうにありません。特殊なスリットが入っており絡まりを防止します。
ケーブルは 1.2メートルと長いです。

ジャックは昔ながらのL字型で結構な厚みがあります。

耳パッドを外した状態です。小さなヘッドホンとは裏腹に大口径のサウンドドライバーが使われていることがわかります。

中身

四方にあるフィリップスヘッドネジをはずしたら中身を見ることができます。

これ以上ないシンプルな構造ですが露出している銅線がほとんどないため、はんだ付け技術の高さが伺えます。ここらへん海外メーカーだと雑で故障の原因となることが多いです。
ドライバユニットはハウジングにガッチリと接着されているので簡単には取り外せそうにありません。
仕様など
| 形式 | ダイナミック型 |
| ドライバ | Φ40mm |
| インピーダンス | 40Ω (at 1kHz/1mW) |
| 音圧感度 | 104dB/mW |
| 最大入力 | 1,000mW(IEC) |
| 再生周波数帯域 | 5 ~ 40,000Hz |
| コード長 | 約1,500mm |
| プラグ | Φ3.5mm 金メッキステレオプラグ L型 |
| 質量 | 約110g(コード含まず) |
音圧感度、再生周波数帯域共にスペック上は素晴らしく、インピーダンスも40Ωで再生できるというのも個人的にはグッドです。
装着感:軽量でそこそこ快適
装着感はオンイヤー式の割にかなり良いと思います。イヤカップも柔らかく側圧もちょうど良いです。
ただ所詮は合皮なので長時間つけていると耳が若干痛くなってきます。柔らかいウレタンイヤパッドのオプションがほしいところです。

アジャスターの長さは割と長く、大きめな筆者の頭にも十分にフィットさせることができました。

重量は 110g ほどしかなく、5分もすれば付けているのを忘れるほど軽いです。
音質:低音過剰の尖りすぎたサウンド
音の出は良いがハチャメチャ
初めて着けたときに驚いたのが音の出の良さです。普通のヘッドホンでは聞き取れないような風音やノイズといった環境音まで聞き取ることができました。
が、大好きなポップスをかけた瞬間、期待は粉々に打ち砕かれました。悪い意味で低音域がかなり強調されています。しかも全体的になにかが詰まってしまっているかのような音です。
ボーカルは遠くで歌っているような不可思議な、楽器の音と混ざりあったような、なんとも言えないサウンドになりました。
他のヘッドホンでも聞き疲れしないよう、ややこもったサウンドに調整がされていることがよくあります。その際ベールをまとったような音と表現することがありますが、このヘッドホンは違います。ST-90-05 は耳を貝殻で覆っているときのような耳閉感があります。
高音が雑で音の分離感がほぼない
「この曲のベース、こんな感じだったんだ」という再発見があって面白いですが、ボーカルを集中して聞きたい方には向かないヘッドホンです。高音が密閉型にありがちな雑さなので女性ボーカルの曲が物足りなく感じます。そしてボリュームを上げるとハウジング内で音が反響するようなキンキンとした不快な音がして慌てて音量を下げたことが何度もありました。ボワッとしているかと思いきや中音の細かな音は正確に表現できているので決してドライバーが壊れているわけではなく、そういう音作りなのでしょう。
特に讃美歌を聞くとこのヘッドホンの弱点が浮き彫りになります。それぞれのパートを聞き分けづらく、本来は風が耳元を吹き抜けるような音色を奏でるオルガンも精彩を欠く古めかしい音になってしまいました。CD音源なのにボイスレコーダー音源を聞いているような錯覚に陥ります。イコライザーを使って多少バランスはマシにできましたが耳閉感は直しようがありませんでした。
YouTube にゼンハイザーとの比較動画を投稿してくれている方がいました。まさにこういったサウンド・プロファイルのヘッドホンです。
コメント欄に
「ASHIDAVOX (dont know what is it) – is complete crap, sorry man. Sennheiser 599 sounds good.」
「ごめんけどASHIDAVOX(というのがなんなのか知らないけど)は完全にガラクタだよ。ゼンハイザー599は良いね。」
という2年前に投稿されたあまりに率直な英文コメントがあり、苦笑すると共に自分の耳はまだ腐っていなかったことに安心しました。ガラクタとまでは言いませんが、だいぶクセ強めなヘッドホンです。
少なくともポン挿しでは聞くに堪えないサウンドだと感じました。
どんな曲、人に向いているか?
ベースをゴリゴリに効かせて楽しい音楽、例えばヒップホップやアコースティックな音楽を楽しめるヘッドホンです。またアナログ音源に迫力を出したいときなどにも良いかもしれません。ですが最近のロックやボカロっぽい曲とは相性が最悪です。エレキやシンセサイザーなどの電子音が本機では聞こえづらい、良さが消えてしまうということが結構あります。
どんなヘッドホンに似てるかと考えたところ、貧乏学生だった頃に 1,500円 くらいで買った「パイオニア SE-M521」がぼんやりと思い浮かびました。入門者用にありがちなバスがブーストされまくった、良くいえばカジュアル向けのヘッドホンです。まあ、あっちのほうがまだハウジングが大きかったので変な反響音はしませんでしたが。
筆者の趣味とは全く合いませんでしたが、このサウンドが好き、という方もネットのレビューを見ると結構おられるようで……まあ人それぞれですね。音なんてものは最終的には感じ方が大事なんでね。
「解像度が高くないから聞き疲れしない」という評価も目にするので、音楽を本気で聞かない人、バックグラウンドミュージックを小さい音量で常に流していたい人、にも向いているのかなという気もします。
エイジングの効果なし
エイジング、英語で言うところの「バーンイン(Burn-In)」というものにも挑戦しましたが結論から言うとほとんど変わりませんでした。
ネットのレビューだとやれ「10時間聞き続けたら膜が取れたようなクリアなサウンドになった」だの「ピンクノイズ100時間流したら世界が変わった」だの書かれていましたが、気のせいだと思います。
自分は1週間ほど本機で耳を慣らしたところ勝手に脳が補正しだしたのかこもった音は多少マシになったように感じましたが、2日ほど他のヘッドホンを使って改めてこれを着けると「やっぱり音がこもってるしベースも大げさだなぁ」という感想に落ち着きました。悪い音を聞き続けたら耳も悪くなる、ということを実感しました。
エイジングという行為自体を否定するわけではありませんが、このヘッドホンに限ってはエイジングでどうにかなるレベルではないです。音が劇的に変わった!という人は多分脳のほうに変化が起きています。眼が老化で飛蚊症になったけど脳が慣れてきて気にならなくなるようなものです。
あとがき
国産、日の丸ヘッドホンということで音質への期待感があまりに高かったので謎に「裏切られた」という気持ちが強く出てしまい、辛口なレビューとなってしまいました。カジュアル向けとしては悪いヘッドホンではないと思います。100均イヤホンから乗り換えたらさぞ感動することでしょう。
ただネット上の評価やメディアの取り上げ方は過大なものだと感じました。同価格帯ならばもっと良い製品が山ほどあります。このヘッドホンはバランスが良いとかモニター用に良いとか言ってる人のことはまず信用してはいけません。
バランスが良いヘッドホンをお探しならば、AKG や オーテク が良いです。
同じ暗め or 暖かめのサウンドがお好きでしたら PortaPro (ポタプロ)や KPH40 のほうがいろんなジャンルの曲を楽しめると思います。まあポタプロは音ダダ漏れだし断線しやすいなどの欠点はありますが。
現在そこそこ良いヘッドホンをお持ちで音質を求めてこの製品を購入すると後悔する可能性は高いと思います。
個人的にはデザインはものすごく好きなのでドライバーユニットだけ入れ替えて改造したいくらいです。穴を開けてオープンバックにして抜け感を出せばマシになるかもしれません。これ(ST90-05)の上位版にあたる ST-90-07 はモニター用でクリアな音を奏でるという評判がありますので気になるところではあります。
おわり




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