Linux デスクトップに対する6つの誤解

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本稿では、デスクトップ Linux を使ったことがない人や使ったことあるけど何年も前に触れたことがあるけど、最近は触れたことがないという人がよく誤解しがちなことについて解説していきます。

Linux のインストールは難しい

たまに驚くことがあるのが Linux はソースコードからコンパイルし、1からシステムを構成しないといけないという勘違いです。もちろん、その方法だと Linux のシステムについて多くを学べると思いますが、現在の一般的な Linux のインストール方法は遥かに簡単です。

現代の Linux ディストリビューションの多くは、インストーラーが非常に洗練されており、 Windows をインストールしたことがある人でしたら、同じような感覚で導入できます。

ただ、一部の古い国産ノートPCや特殊なハードウェアを搭載している機器だと正しくうごかないことがあります。最近の PC は大丈夫ですが、古い国内企業の PCなどは、変なハードウェアを搭載していることが多く、いざインストールしてみたらが一部の機能が使えないといったことがあります。

コマンドラインが使えないとまともに動かない

これは Linux を過去に触ったことがある人でもよく誤解していることですが、Linux デスクトップはコマンドをうてないと使い物にならないというものです。

Linuxを全く触ったことがない人はLinuxユーザーはみな黒背景に緑の文字が流れている画面の前でカタカタとコマンドをうっているのが脳裏に過ぎっていることでしよう。

これは全くの誤解で20年前くらいの認識です。Linuxデスクトップは現在、ほとんどのディストリビューションでキーボードカタカタを一切せずに OS のインストールからウェブブラウジング、文書編集、といった一般的な作業をこなすことができます。ネットワークの切り替えや日常的に必要な設定も他の OS のようにマウスでポチポチと変更できます。

Linux Mint などの Windows と使い勝手も似たデスクトップ環境もあり、自分で様々な改造を施せます。

コマンドラインの方が明確で早い

ではなぜいまだにターミナルを用いてコマンドをカタカタするのを勧めている解説サイトや公式サイトが多いのかと言いますと単純にその方が作業が圧倒的に速く、間違いも起こりづらいからです。ターミナルにコピペしてエンターキーを押すだけ良いだけですし、コマンドは一文字でも間違いがあれば実行されません。心理的なハードルさえクリアできれば世界が変わります。

それに解説する身からしてもたった1行のコマンドについて説明すれば良いので非常に楽なのです。グラフィカルインターフェイスだとどこどこのどのボタンを押して次はどこを押すという手順を書くのが大変面倒です。画像も用意しなければなりません。


全く学習意欲がなく、新しいことを覚えたくないという方には Linux は絶対におすすめしません。ただ単に無料だからという理由で使うと必ずここがWindowsと違うなどの不満が出てきます。おとなしくマイクロソフトに金を払ったほうが良いです。

ですが、新しいことを始めたいがコマンド入力がLinuxを使うことを足踏みさせている、という状況でしたら一度仮想PCなどで「Linux Mint」や「Ubuntu」などのメジャーなLinuxディストリビューションに触れてみるのが良いでしよう。LinuxのGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェイス) がいかに充実しているのか体感してみるのも良いかと思います。

Linux にはまともなデスクトップ環境がない

これは前述の話とも繋がりますが、 Linux にはろくなデスクトップ環境がないという勘違いを時折見かけます。これは大きな間違いです。Linux には無数のデスクトップ環境開発プロジェクトがあり、その中から自分の好みのものを選ぶことができます。

Linux のデスクトップ環境は自分が知っているだけでも10種類以上あります。

おそらく一番使われているであろう配置がちょっと  macOS ライクなデスクトップ環境。「GNOME」

Fedora 31 Beta

エフェクトがリッチでカスタマイズ性が高い「KDE Plasma」

KDE Neon 2019.10

Windows OS のガワと配置構成が似た Cinammon

システム負荷が軽い XFCE

これらのデスクトップ環境はそれぞれ使い勝手に違いがありますが、いずれもコマンドラインなども使わなくても簡単に操作することができます。ツールを組み合わせて自分だけのデスクトップ環境をつくることもできます。

Linuxは再起動を必要とせず環境が壊れない

LinuxはサーバOSとして非常に優秀でCUI環境で作業していれば滅多に環境が壊れたりせず、カーネルの入れ替えすらシームレスに行えます。しかしデスクトップ環境では話が違ってきます。

GNOMEやKDEなどのデスクトップ環境はWindowsのそれとは歴史が浅く、開発チームの規模も小さいです。それにLinuxデスクトップはたくさんのプロジェクトの集合体です。多くのプロジェクトがそれぞれ違う方向を向いて開発をしていたりするのでそこで齟齬が生まれることもあります。はっきり言って安定性の面ではWindows OSと同等以下です。

しかしそれ以上にプライバシーや無限ともいえるカスタマイズ性があります。こういったものに価値を見いだせる人が使うべきOSです。

Linuxはウィルスにかからない

よくある誤解としてはLinux はウィルスやマルウェアに感染しないというもの。このように解説するサイトも多いことからまるで Linux が無敵であるかのように宣伝しているところもありますが現実は違います。

Linux サーバのウィルスの生態

クライアントPCではほとんど見かけないLinuxですが、世界中の大中小企業のサーバーで使われています。サーバーシェアの実に70%を占めていることからいかに広く使われているのか分かると思います。

少しでもテック関連のニュースを追っている方ならば、Linux サーバーがウィルスに感染したという記事をたまに見かけることがあるかと思います。シェアが高いことから狙われやすいのです。

よくある事例としては Linux サーバ上の特定のプログラムの脆弱性を狙ってファイルが改ざんされ、ウィルスが仕込まれるというものです。この場合でも Linux システム自体には被害が及ばす、アクセスしてきた Windows PC が感染して被害が出るというケースが多いです。鳥インフルエンザみたいなものです。

もちろん Linux サーバ本体を狙ったものもありますが、情報を盗み出すトロイの木馬に分類されるマルウェアがほとんどで Windows サーバのそれと比べ、被害は軽微なものが多いと言えます。これは Linux はプロセス同士が影響し合うことが少ないためです。1つのプログラムに問題を起こしてもシステム全体に影響することは少ないです。

ですが、顧客から信頼の失墜や経済的損失は免れません。不要なサービスを停止したり、権限の管理、ファイヤーウォールの設定、ソフトウェアの更新など、セキュリティホールを潰していく日頃のメンテナンスが必要なのは Windows サーバとなんら代わりはありません。

Linux サーバにおいてはアンチウィルスソフトの導入はあったほうが良いと著者は考えております。 Linux のアンチウィルスソフトは二次被害を防ぐため、もっぱら Windows を狙ったウィルスを除去するツールとして使う感じです。

Linux デスクトップのウィルスの生態

閑話休題、デスクトップの話に戻します。確かに Linux のデスクトップ環境はウィルスにかかることはほぼないのは事実です。私もアンチウィルスソフトを入れずにおよそ10年くらい Linux をメイン PC の OS として使っていますが、一度も感染したことはありません。

これは Linux が Windows のように権限をばらまくことをしないという構造上の特性と的が小さすぎて標的にされづらいからです。あと Linux ユーザが PC の取扱に関する知識がそれなりにあるということも挙げられるでしよう。

デスクトップ用途で Linux を使っている人のシェアはデスクトップパソコン全体のわずか1%未満です。これを狙ってウィルスを作ることは目を閉じたまま針の穴に糸を通すようなものです。それに Linux には Gnome、 KDE や XFCE など様々なデスクトップ環境が存在します。あえて Linux のデスクトップ環境を狙うのは馬鹿げており、徒労に終わる可能性が高いです。

ですが、最近になって GNOME を狙ったマルウェアの存在も確認されています。感染経路が極めて限定的で被害はありませんでしたが、 Linux だから脳死状態で無防備に発信元不明なメールの添付ファイルや怪しいサイトからファイルをダウンロードして実行しても絶対に大丈夫ということはないということを頭の片隅に置いておくべきでしよう。

対策としてはパッケージやデスクトップ、ブラウザの拡張機能、プラグインなどを必ず公式サイトや公式リポジトリからダウンロードすることです。間違っても出自不明の野良ソフトウェアを考えなしにインストールしてはいけません。 ITリテラシーの基礎の基礎を守ってさえいればトラブルになることはまずないです。

Linux ではゲームができない

これは半分正しくて、半分間違っています。

正確には Linux で出来るゲームが Windows に比べ、”まだ”少ないです。

Valve が Linux ゲーミングを強力にサポートしていることと、ProtonLutris といった互換レイヤーとツールが普及により、たとえ Windows 専用ゲームであってもLinux 上で動かすことができるようになってきました。たまに Windowsでプレイするよりも快適に遊べます。

しかし、チート対策が成されているゲーム、PUBG 、レインボーシックスシージ、フォートナイトやバトルフィールドと言ったビッグタイトルなオンライン対戦ゲームができません。これはゲーム好きな人にとっては大きな失点でしよう。

ですが、ProtonDB では Steam Proton でおよそ 6,500 タイトルのゲームが遊べるという頼もしいデータがあります。これは数年前では考えられないほど増えています。ひとえに Steam のおかげです。

さらに Vulkan API の普及により、Linux クライアントへの移植が楽になったり、ブラウザで高品質なゲームが遊べるようになる Google Stadia と言ったクラウドゲームサービスの台頭も Linux でのゲーミングの幅を広げてくれる可能性を秘めています。今後に期待したいです。

Photo by Paul Carroll on Unsplash


以上です。

読者様の中で Linux に対するこういった誤解や嘘を見かけたという方がいらしたら是非コメントしてください。

本記事に対する批判も歓迎です。

コメント

  1. tomcat より:

    大変参考になる記事をありがとうございます。

    ゲームについて質問ですが、昨年6月に、SteamがUbuntuのサポートを終了するとの発表があったと思いますが、これは、Steamが今後Linux環境の顧客を重視しない、という姿勢に変化したことのあらわれであると思われますか?

    • slacknote より:

      コメントありがとうございます。

      去年6月にValveがUbuntuのサポートを打ち切ると宣言した件ですが、問題の発端はUbuntu側が32-bitアプリケーションのサポートを打ち切るとの情報が流れてしまったためです。Steam PlayのProtonはWineが心臓部に使われているので32bitライブラリが使えなくなってしまいます。サポートできなくなるのは仕方のないことだと思います。

      私はValveよりもCanonicalが問題だと思います。UnityやMirなど数々の失敗を犯しては撤回するということを繰り返し、デスクトップ・ユーザーを失望させてきました。新しいことにチャレンジするということは素晴らしいことですが、どうもいつもやることがズレていると感じます。

      Valveは件の後もSteam Playへのアップデートを精力的に行っていますし、Linuxに対する姿勢は変わっていないと思います。現在開発が一時休止されているDXVKがどうなるのか心配ではありますが。

      Ubuntuコミュニティからもだいぶ32-bitパッケージの廃止に対してネガティブな反応があったようで、Snapsなどのコンテナ技術を用いて今後もSteamが動作する環境を提供することにしたようです。現在Ubuntuがおそらく最大のシェアを持っていますが、今後他のディストリビューションがメインストリームになることもありうると思います。
      https://ubuntu.com/blog/statement-on-32-bit-i386-packages-for-ubuntu-19-10-and-20-04-lts

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