以前から興味があった Lenovo 製ノートPC、「IdeaPad Slim 5i」の第 8 世代 OLED ディプレイ搭載機をレビューします。
美麗なOLEDディスプレイ搭載の高コストパフォーマンス・ノートPCをお求めでしたらまず第一に候補にあがってくるのが本機でしよう。 Lenovo 様から貸し出していただいた機材を使用し IdeaPad Slim 5i Gen 8 OLED を使ってみた感想から細かなあら捜しまでしていきたいと思います。
スペック
「IdeaPad Slim 5i Gen 8 (82XD003XJP)」のスペック表は以下のようになっています。
CPU | Intel® Core™ i5-13500H プロセッサー (Eコア最大 3.50 GHz Pコア最大 4.70 GHz) |
OS | Windows 11 Home 64bit |
GPU | CPU内蔵 (インテル® Iris® Xe グラフィックス) 128MB |
DRAM | 16 GB LPDDR5-5200MHz (オンボード) |
ストレージ | 512 GB SSD, M.2 PCIe-NVMe Gen 4 TLC |
ディスプレイ | 14インチ” WUXGA OLED(有機ELディスプレイ) (1920 x 1200) 光沢あり, マルチタッチ非対応, HDR500, 100%DCI-P3, 400 nit, 60Hz, ブルーライト軽減パネル |
内臓カメラ | IR&1080p FHDカメラ (プライバシーシャッター付)、マイク |
バッテリ | 3 セル リチウムイオンポリマーバッテリー 56.6 Wh |
電源アダプター | 65W |
ポインティングディバイス | タッチパッドのみ |
キーボード | バックライト付 – 日本語 |
ワイヤレス | Wi-Fi 6E対応 (IEEE 802.11ax/ac/a/b/g/n準拠) 2×2 & Bluetooth® |
保障 | 1 年間 引き取り修理 |
ボディ色 | クラウドグレー |
機能美を感じるデザイン
昨今のノートPCは各社非常にシンプルなデザインになっているので本機は特別ミニマリスティックとは感じませんが Lenovo製の PC は機能美を感じるものが多く IdeaPad シリーズもその一つです。
会議室や大学キャンパス、どんなシーンでも合います。鈍く銀の光沢を放つアルミボディは悪目立ちせず、ロゴも控えめで高級な文房具のような第一印象を持ちました。
美麗な OLED ディスプレイ
WUXGA、16:10の広いアスペクト比のOLEDディスプレイを搭載しています。
OLED (有機EL)ディスプレイはものすごく簡単に説明すると極小のLEDを敷き詰めたディスプレイです。最近の iPhone などの高性能スマホに多く使われています。消費電力が少なく、明暗の表現に優れており、鮮やかな色彩や闇夜のようなキレイな黒が表示できます。ただ従来の液晶ディスプレイに比べて寿命が約半分ほど(焼きつきを起こす)という欠点もあります。
ですが最近のOLEDパネルは優秀なので酷使しても5年、1日1〜2時間程度の稼働ならば10年は保つとも言われています。ここらへんは使い方によるでしょう。
本機のディスプレイは DPI-3 を100%カバーしているということもあり、色域が広く印刷物や動画像の編集などのクリエイティブな作業にも向いています。
400nit とかなり明るいディスプレイなので屋外であったり明るい室内での会議でも視認性の低下が抑えられ比較的快適に作業できます。さすがOLEDといったところで視野角もなかなかのもの、ただ表面加工が光沢型で光を反射することだけを念頭に入れておいたほうが良いでしょう。
写真では若干のフリッカーが発生しているようにも見えますが筆者の肉眼ではわかりませんでした。眼がチラツキに敏感な方は実店舗などで展示品をご覧になった方が良いかもしれません。
充実の対応ポート
自分がテストした環境ではなぜか HDMI ポートから4K出力できませんでしたが、USB 3.2 Type-C ポートからは 4K出力できました。
個人的に残念なのはフルサイズの SDカードに対応していないことです。 デジタル一眼レフをよく使うので USBドングルを介さずに使えたら便利でした。IdeaPad Slim 170 などの下位モデルには4-in-1メディアカードリーダーが搭載されているため、割と謎なチョイスです。
高画質なインカメラ
Webカメラは1080pに対応しており高画質です。縫いぐるみの毛先までくっきりと映っています。照明が後ろにある状態でも白飛びせずにしっかりと人物を捉えることができます。
付属ソフトの「Lenovo Smart Appearnce」は「ビデオ・エンハンサー」や「顔フィルター」といった色調を自動的に調整したり顔面をスムージングする機能があります。「フェイス・フレーミング」という顔を追尾して画面を切り取ってくれる機能が面白いです。
さらに物理的にカメラの視界を塞ぐスライド式のプライバシーシャッターがあります。シャッターが閉じているときは赤くなるので一目でわかります。
カメラの横にはIRセンサーが備わっており反応も早いです。離席時には自動でログアウトし、着席時に Windows Hello と連携して顔認証を行ってくれるのですぐに作業に復帰できます。
大きなキーパッドと打ちやすいキーボード
キーボードは Back space と|、Enterと] との隙間が少ないので慣れるまでタイプミスを連発してしまいました。
しかし、キー配列自体は標準的なJIS配列そのものなのですぐに慣れると思います。キーピッチは 19mm×18mm とキーの間隔も大きく打ち間違いも起きづらいです。ガタツキや遊びはほとんどなく、精巧に作られたパンタグラフ・キーボードです。筐体が金属製で丈夫なため力を入れてもほとんどたわむことがなく安定した打ち心地です。
タッチパッドは大きく使いやすいですが、クリック感と音がペコペコとやや大きく安っぽいのが少し残念でした。
スピーカーと駆動音
スピーカーの音量は本体のキーボード両端についているだけあって大音量が出ます。ただ低音域が薄っぺらいので大迫力の音質は期待しない方が良いです。Dolby のオーディオ・イコライザーがインストールされているのでBass寄りのチューニングにすると少し改善します。
冷却ファンの動作音ですが、CPUがアイドル時はほぼ無音です。 YouTube で 4K 動画 を再生しても CPU 使用率が 10%を越えないためほぼ無音で動画視聴できます。
冷却ファンがフル稼働すると「サー」という音が結構します。本機から 60cm も離れると 35dB 以下まで減衰したのでイヤホンをしてしまえば音は聞こえなくなります。ファンが1つしかないため冷却性能が不安でしたが TDP が低く抑えられているのとアルミ製筐体なためか熱分散がかなりよく CPU が冷えるのが早いように感じます。CPU 使用率が下がればすぐにファンは静かになります。
携帯性は普通
本機は14インチ型の中でも重くもなく軽くもないといった感じです。
Lenovo IdeaPad Slim 5i Gen 8 | 1.46 kg |
MacBook M3 Pro 14 | 1.61 kg |
HP 14 Ryzen 5 | 1.39 kg |
Inspiron 14 Core i5 | 1.53 kg |
Fujistu FMV LIFEBOOK U90/H1 | 0.85 kg |
MicroSD カードを挿入したままだとほんのわずかに出っ張るため、バッグに入れる際引っかかることもあります。
電源アダプタも大きすぎず重量も 310g です。 総重量は本体 1.46kg + 電源アダプタ 310g で 1.8kg なので持ち運びに困ることは少ないでしょう。
画面は170°くらいまで開くので可動域が広く画面の共有もしやすいです。
高性能CPU搭載だがマルチコア性能はパッとしない
本機は Intel の第 13 世代ハイパフォーマンス・モバイル・プロセッサ「Intel® Core™ i5-13500H」を搭載しています。14インチ型のOLEDディスプレイを搭載しているノートPCでこれ以上の性能のCPUを搭載している市販ノートPCは日本では2台くらいしかありません。
かなり高性能なCPUを積んでいる本機ですが少電力化するために性能が落とされているらしく、i5-13500H 本来の性能を発揮出来ていません。
ベンチマーク結果
ネット上で共有されているデータが多い CineBench R23 を使って本機の性能を測定しました。いずれもエクストリーム・パフォーマンスモードにしています。
- Cinebench R23 シングルコア
スコアは 1713 でした。長年有志から大量のデータを収集して公開している Notebookcheck によれば i5-13500 搭載マシンのシングルコア平均値は約1750点台です。1700点台が出ているのでそれほど性能の低下をおこしていません。 - Cinebench R23 マルチコア
スコアは 12030 でした。Notebookcheck によれば i5-13500 の平均値は約14500点台なので約 -18%の性能です。Intel Core i5-13500H はマシンの設計次第では15000点台を出せるポテンシャルがあるプロセッサーなので低い結果と言えます。前世代の Intel Core i5-12500H にも劣るスコアです。しかしノートPCとしてみたら十二分な性能です。
本機はマルチコア性能を落とす代わりに消費電力を削減しているようです。i5-13500Hは低電圧化しなければ TDP45W、最大で95W消費するという暴食CPUであっという間にバッテリーを吸い尽くしてしまいます。ゲーミングPCではないので理解できる選択ではあります。
シングルコアのパフォーマンスはそれほど落ちていないのでよほど重いマルチタスク処理をやらせなければあまり性能差を体感しないでしょう。実際普段使いしてて性能不足だと感じる場面はありませんでした。
Windows 11 をコールドブートからの起動には11.8秒かかりました。10秒台前半はかなり早いと言えます。高速な NVMe M.2 SSD ドライブを搭載しているおかげでもあるのでしょう。
ゲーミングパフォーマンス
本機だけで生活する想定でベンチマークテストやどんなゲームが遊べるか試してみました。
結果から言うと搭載されている Intel の内蔵GPUは古いゲームやインディーゲームならば快適に遊べますが、最新のゲームはグラフィックの設定を設定に落とさなければ遊べません。
- ◯ 原神
- ゲームプレイはスムーズでカクつくことは少ない。
- CPU使用率は約45%で余裕がありますが、 GPU使用率は常に99%付近を張り付いていた。
- ◯ ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク
- 設定は高品質(デスクトップPC)1920 x 1080 フルスクリーンモード
SCORE 4865 (普通) 平均フレームレート 33.9 最低FPS 20 。 - 標準品質(ノートPC)まで画質を落としてスコア 7902 (やや快適) 平均フレームレート 55
- 設定は高品質(デスクトップPC)1920 x 1080 フルスクリーンモード
- ✕ StreetFighter6 ベンチマーク
- デフォルトの設定で平均フレームレートは20FPS。トータルスコアは 20/100。
- 設定を低画質に落としても 60 点でした。本機で遊ぶのは厳しいでしょう。
- ✕ サイバーパンク 2077
- 低設定で平均フレームレート 18FPS
- ◯ ヴァロラント
- グラフィック品質 中、アンチエイリアス MSAA 2x で平均フレームレート。練習場で平均フレームレート98FPS
ヴァロラントなどオンライン対戦FPSは軽快に動作しますがグラフィックが売りのビッグタイトルのゲームは中々厳しい結果となりました。
ですが、内蔵GPUでこれだけ多くのゲームを動作させるのは大したものです。 Iris Xe シリーズの着実な進化を体感できました。
標準的なバッテリー
バッテリ容量は 4914mAh / 56.6Wh と他の14型ノートと比べても遜色ありません。
セル数 | 毎時ワット出力 | |
---|---|---|
Levono IdeaPad Slim 5i Gen 8 | 3 | 56.6 Whr |
HP 14 | 3 | 41.0 Whr |
DELL Inspiron 14 | 4 | 54.0 Whr |
Fujitsu LIFEBOOK UH90/H1 | – | 64.0 Whr |
各社の売れ筋14インチ型はこんな感じなので容量としては標準以上と言っても差し支えないと思います。
メーカー公式のバッテリー連続動作時間は14時間です。画面の輝度を落として動画再生だけするならばハードウェア支援機能が動作しますので公式の14時間にかなり近いものになると思いますが普通に使ってればこの半分以下の動作時間です。
自分がテストした中では輝度100%でゲームなどしてかなりハードに使って3時間。輝度 40% で文章作成やWebブラウジング、動画視聴などして5〜6時間ほど稼働しました。
競合機種
2024年1月現在、14インチ型のOLED ディスプレイを備えた機種で10万円以下で購入できる機種は本機と「ASUS Vivobook S 14X OLED」だけです。
Vivobook のキーボードは電源ボタンが Delete キーの真横にあり、誤ってシャットダウン・スリープしてしまう可能性がある割とトンデモ配列のキーボードです。しかも DRAM を 8GB しか搭載していません。なので実質ライバル機は12万円超えの「Aser Swift Go」です。
このことからCPUが多少デチューンされていてもコストパフォーマンス最強と言っても過言ではない OLED ディスプレイ搭載14インチノートです。
注意点
上記でも解説しましたが、以下のようなことを購入する前に知っておく必要があるでしよう。
- i5-13500H版はCPUのフルスペックが出せない
- Thunderbolt 4非対応
- HDMI ポートが4K出力できない(USB-C からは出力可)
- 普通の肉眼ではわからない程度のフリッカー
- フルサイズのSDカードスロットがない
総評
「Lenovo IdeaPad Slim 5i Gen 8」はこだわりが強い人にとっては意外なところで妥協があってガッカリしてしまうかもしれません。
ですがそれらに目をつぶれば14インチ型OLED搭載機としては最安にもかかわらず全体的に作りがよく、高品質高性能なノートPCです。ゲーミングPCとして使うのはいささか性能不足ですがそれ以外のタスクはストレスなくこなせるでしよう。
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