AMD は Nvidia RTX に対して無力なのか

2018年10月3日
改稿:2018年10月25日

一般向けのグラフィックカード市場は Nvidia に支配されている。もはや AMD に追いつく術はない、という言説が流布されているが果たしてそうなのだろうか。今回は AMD の現状を踏まえた上で著者の希望的観測と妄想を交えて今後の Radeon がどうなっていくのか解説していこうと思う。

AMD の技術力


AMD(Advanced Micro Devices)は近年、ゲーミングなどの一般用途の商品よりも、エンタープライズ向けの商品に力を入れてきた。Radeon Pro シリーズ や Radeon Instinct のようなディープラーニング、ニューラルネットワークや特定のソフトに特化した商品を見ればそれがうかがえる。

その中でも AMD は Nvidia RTX に搭載されているような「ハイブリッド・レンダリング」技術をとっくに獲得しているのだ。その証拠に Computex TAIPEI 2018 でレンダリング前の編集途中にもかかわらず、 CINEMA 4D を使ってリアルタイムで光子とその反射をシミュレートするレイ・トレーシングをスムーズにプレビューしたデモを行ってみせた。

AMD は Nvidia RTX のようにゲームでリアルタイムにレイ・トレーシングをすることについては言及していなかったが、その技術は確実に持っており、Nvidia RTX に対して対抗手段がないという言説は間違いだ。

7nm GPU の発売は近い


AMD CEO のリサ・スー氏は Computex 2018 でゲーミング市場にも 7nm GPU を絶対にお届けするので、期待して待っていてほしいと断言した。

もうすでに AMD からワークステーションやエンタープライズ向け Vega ベースの 7nm プロセス Radeon Instinct は発表され、サンプルが数々の企業に出荷されている。

年末には Radeon Instinct 7nm をゲーミング用に最適化した Radeon RX シリーズの発売を期待できるかもしれない。

Nvidia が 7nm プロセスチップ開発の見通しが立っていない中、ゲーミング市場でアドバンテージを取れないまでも追いつくことはできるのではないかと思う。

Nvidia の RTX シリーズ


9月に Nvidia は RTX 20シリーズを発売したわけだが、やはりというべきかレビュアーの間での評判は芳しくない。少々実験的すぎる商品だからだ。

1080 に比べ、わずか30〜40%の性能向上にとどまっているにもかかわらず、価格は2倍。しかも肝心のレイ・トレーシングを試せるゲームがまだ発売されていない。唯一レイ・トレーシングを体験できるのはFFのベンチマークくらいだ。

これに加え、Nvidia が Computex で見せたデモも悪い意味で話題になった。レイ・トレーシングを有効化した場合、60フレーム毎秒 どころか 30fps 程度しか出せていない(シャドウ オブ ザ トゥームレイダー)ゲームもあった。明らかに準備不足だ。

なぜここまで Nvidia は焦ってこのどデカイDIEと未成熟な技術を盛り込んだグラフィックボードを出したのか。

今年の1月までは市販されているもので AMD GPU こそがレイ・トレーシングなどのようなハードウェアレベルの最適化が必要な技術が得意であったが、Nvidia RTX シリーズが出てからこれがひっくり返った。

Nvidia は同様の機能を持った AMD の 7nm GPU が年末にやってくることを察知して RTX の発売を急いだのではないかと私は想像している。Nvidia ほどの巨大企業がライバルが一人しかいない市場で敵の商品サンプルを手に入れられないなんてことはないだろう。確実に Radeon Instinct 7nm を手に入れているはずだ。

AMD よりも先にゲーム開発者を囲い込んで市販コンピュートの業界スタンダードを決める立ち位置につきたいのだろう。

一番の懸念は価格


新しく発売されるであろう、 AMD Vega 7nm GPU は価格設定さえ間違えなければ Nvidia のグラボ市場一極支配に風穴を開けることができるだろう。逆にここを間違えたら Vega 56 や64 の二の舞になる。そのためには高価すぎる HBM2 を捨てる必要があるだろう。市販品に HBM2 は明らかにオーバースペックだ。

8月に発表された中国市場向けのゲームコンソール「シャオバーワンZ+」には Vega が搭載されているにもかかわらず、 GDDR5 が使われている。このことから Vega は HBM 以外でも動かすことができるのがわかる。

まだ未確定ではあるが性能的には Vega 64 の 1.35倍 であると公式発表されており、1080Ti の少し上くらいだ。 Nvidia は 1060 などのボードに GDDR5X を乗っけて再び売り出している。 10シリーズのチップの在庫を腐るほど抱えているためだ。まだしばらくは 10シリーズを主力として売っていくだろう。

Radeon にとって来年が勝負の年となる。健全な市場を取り戻すためには唯一の対抗馬である AMD に頑張ってもらう必要がある。

ぜひとも Vega 7nm には成功してほしいものだ。

ー 終 ー


 

こちらの記事もどうぞ

Intel CPU の供給不足がメモリの価格下落をもたらす?... Photo by Alexandru-Bogdan Ghita on Unsplash 2018/09/16 改稿:2018/09/30 今週、 Intel は 14nm プロセス CPU 生産の一部を TSMC (台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング)に委託すると発表。インテルがモバ...
Linux では AMD と NVIDIA どっちが良いのか 2018... 改稿 2018年10月3日 Radeon と GeForce 、Linux ではどっちが良いかという論争が度々起こる。今回は自分なりの感想を載せながらどちらが良いか比較しようと思う。ベンチマークなどは他の海外サイトがいくらでも載せてくれているので、そのリンクのみにとどめおこうと思う。 ゲーム...
Nvidia RTX 2080はGTX 1080よりも35〜45%しか性能向上していない!?... Nvidia のテクニカルマーケティング・ディレクターの トム・ピーターソン氏がYouTubeのポッドキャストにて行ったQ&A。   https://www.youtube.com/watch?v=YNnDRtZ_ODM   ポッドキャスト...
Intel の 10nm プロセス開発遅れの原因は?... Photo by Jason Leung on Unsplash 2018年08月16日 訂正:2018年10月24日 Intel は長らく24ヶ月ごとにプロセッサの製造プロセスを微細化するペースを守ってきた。しかし、 14nm プロセスでの製造開発が遅延。24ヶ月が36ヶ月になり、 10nm...

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。