ほとんどのAMD CPUは16MB BIOS ROMまでしか認識しない問題

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AMDが方向転換

先週AMDの公式アカウントが海外の掲示板Redditにて、B450とX450チップセットを搭載したマザーボードでZen3アーキテクチャCPUをサポートすると発表した。

これは5月7日にAMDが公式ブログにて400シリーズのマザーボードのサポートをZen3では行わないとした発表を打ち消す内容で、PCマニアの声を拾った形だ。

大量に400シリーズチップセットを買い込んでいるMSIの強い後押しがあったとも噂されている。

The Exciting Future of AMD Socket AM4
In 2016, we made a pretty bold commitment to you: we would continue to support AMD Socket AM4 until 2020. It was a big p...

そもそもなぜAMDは400シリーズでZen3をサポートできないと発表したのか。多くのメディアでソケットAM4での対応CPUを増やしすぎた結果、マザーボードのEEPROMの容量不足が起きているということを指摘されてきたが、もう少し込み入った技術的な問題が存在するようだ。

AMD CPUのほどんどが16MB EEPROMしか認識できない

実は過去のほとんどのAMD CPUは32MB EEPROMに対応していない。16MBまでしかアドレスできないのだ。発売されている商品の中で32MBに対応しているのはAMDのコードネーム”Matisse”以降のCPUのみだ。

これが原因で単純にBIOS ROMを大容量化すれば解決する問題ではないようだ。現存するマザーボードは500シリーズで登場するような高性能なAPUに対応できない可能性が高い。

現在、マザーボード・ベンダーはMatisse以降のCPUとPinnacle Ridge以前のCPUを同じマザーボードで動かすのに32MB BIOS ROMを2つの16MBパーティションに分割するという荒業で対処しているようだが、片一方のパーティションの容量が足りず、CPUによってはファンコントロールなど一部使えなくなってしまう機能が出てくる。

たとえば、MSIのMAXシリーズを例にあげよう。これらはいずれも32MBのBIOSチップを搭載しており、Zen2世代CPUをサポートするために2つにパーティション分けされている。

最初の16MBパーティションがMatisseとVermeerに対応しており、必要に応じて2番目の16MBパーティションからオシャレなGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)などを引っ張ってくる。Matisse以降のCPUはこういった芸当ができる。残りの古いCPUを動作させるデータは2番目のパーティションに収められているため大変逼迫した状態になってしまっており、ファンコントロールなどの機能のために一部のCPUのサポートが除外されている。マザーボードに高速なイーサネットLANなどハイエンドなI/O部品やオプションを装備させるとなると更に複雑になってくる。

またAMDから供給されているAGESAファームウェアのコードがクローズドでマザーボード製造会社にはバイナリのみしか配布されていない。自由に改変できず、機能の削減などができないため、かなり容量を食ってしまっているようだ。

Pinnacle Ridge以前のCPUは16MBしかEEPROMを認識できないため、多くのマザーボード製造会社は一部のCPUのデータを削減しなければならなくなっている。APUを搭載したBristol Ridge、Raven Ridge、Raven Ridge2などのあまり多く出荷されていないCPUが対応していないマザーボードが多いのはこのためだ。

CPUに応じてBIOSを配布すれば良いではないかと思われるかもしれないが、BIOSアップデートはRMA(返品)のリスクが高い。マザーボード・ベンダーはそこまでやりたくないのはわかるだろう。

参考

Zen3に対応したことで発生する新たな問題

X470とB450がZen3サポートされることになるわけだが、AMDはこれはあくまでベータ版のBIOSとしてマザーボード・ベンダーに発行するようにさせるようだ。基本的にアップデートはユーザの自己責任という形だ。

AMDは引き続き500シリーズチップセット搭載のマザーボードを強く奨めている。X470/B450ではZen3のすべての性能・機能を引き出せないからだ。そしてZen3以降のCPUはX470/B450ではサポートしないことを表明した。

おそらくファイルシステムの変更があるのだろう。マザーボードがおしゃかになる危険性は高いと思われる。

また、これはマザーボード製造会社によるだろうが、ダウングレードは基本的に行えない可能性が高い。このことからZen2以前のCPUが動かなくなるということもありうる。

中古市場ではおおいに混乱が起こることは想像に難くない。

AMDはコロコロとソケットタイプを変えているIntelを揶揄するようなマーケティングを行っていたことから引き返せなくなってしまったのだろうけれど、いっそ潔くソケットの名前や形状を少し変えるなりすべきだったのではないか。これからも無用な混乱を発生し続けるだろう。

そろそろDDR4/DDR5の転換期も迎える。いずれにしても500シリーズのチップセットが出揃ってから新CPUを買う判断をしたほうが良いと考える。

おわり

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