前書き
仮想マシンとは物理的なコンピュータと似た機能性を提供するエミュレータです。
この中でも無料かつ高機能な仮想マシンツールを言えば「Oracle VM VirtualBox」と「VMware Workstation Player」です。
両方とも無償でインストールでき、Windows OS と Linux に対応してるクロスプラットフォームなソフトウェア。どちらも高性能なのでどれを使えば良いのか悩む方も多いと思います。
おすすめはどれか断言をするのは難しいですが、それぞれ機能やパフォーマンスに違いがあるのでここではその解説をいたします。この記事が一助になれば幸いです。
機能の比較
こちら個人利用で使いそうな機能を並べた比較表です。
Oracle VM VirtualBox 6.0 | VMware Workstation Player 16 | |
---|---|---|
ホストOS | Linux、Windows、Solaris、macOS、FreeBSD | Linux、Windows |
ゲストOS | Linux、Windows、Solaris、FreeBSD、macOS | Linux、Windows、Solaris、FreeBSD |
レンダリング | ハードウェア+ソフトウェア | ハードウェア |
共有フォルダ | ○ | ○ |
スナップショット機能 | ○ | × |
USBサポート | 要拡張機能 | ○ |
3D API | DirectX 9、OpenGL 3.0 | DirectX 11、OpenGL 4.1 |
ビデオメモリ | 256MB | 8GB |
対応VMフォーマット | VDI、VMDK、VHD、HDD | VMDK |
ネットワークストレージ | iSCSI、NFS、SMB (CIFS) | × |
リモート | phpVirtualBox | × |
VM暗号化 | 要拡張機能 | × |
ライセンス
- VirtualBox – もともと Sunマイクロシステムズが開発を行っていましたが現在は Oracle が所有・発行しています。バージョン3.xまでプロプライエタリ(有償)・ソフトウェアでしたが、バージョン4.x以降はオープンソース版(OSE)が発行されました。誰でも自由に使うことができます。ただし追加機能を提供するエクステンションパッケージは無償で使えるのは個人利用と教育目的に限られます。
- VMware Workstation Player – 個人と教育目的にのみに限られ商用利用は不可です。商用利用するには VMware Workstation を購入する必要があります。
対応OSとハードウェア
仮想マシンソフトウェアが仮想マシンをレンダリングする方法としては、ハードウェア(CPU)の仮想化支援技術に依存したハードウェアレンダリングとハードウェアに依存しないソフトウェアを用いたレンダリングがあります。
Intel の場合は Intel-VT、 AMD の場合は AMD SVM などの仮想化支援技術が存在し、昨今のほどんどのCPUはハードウェアレンダリングに対応していると言っても良いです。しかし Intel Core 2 シリーズや AMD Bulldozer 以前の CPU では対応していない CPU も多いので古い PC で使う上では注意が必要でしよう。

- VirtualBox – Windows OS、Linux、macOS とそれぞれパッケージが用意されています。さらにハードウェア・レンダリングの他にもソフトウェア・レンダリングにも対応しています。
- VMware Player – Windows OS と Linux に対応しています。ハードウェア・レンダリングにのみ対応しています。
スナップショット機能
スナップショット機能とは仮想マシンのその時の状況を保存する機能です。仮想マシンの環境を破壊してしまった場合もすぐさまスナップショット時の環境に戻せます。
スナップショットを作成すると仮想マシンに加えられた変更をもとの仮想 PCイメージとは違う小さなイメージを作成します。いわゆる差分です。完全なバックアップとは違いますがすばやく作業を巻き戻すことができるので便利です。アプリケーションのインストールテストなどを行うときに大変役にたちます。スナップショットが削除された場合もとの仮想PCイメージに統合されます。この機能があるのとないのとでは天と地ほどの差があり、仮想マシン・マネージャを選択する上で大きな判断材料でしよう。
- VirtualBox – スナップショット機能を搭載しています。

- VMware Player – スナップショット機能はありません。有償の VMware Workstation には搭載されています。
USBデバイスのサポート
- VirtualBox – USB 1.1 までしか対応していませんが無償で商用利用不可の VirtualBox Extention Pack をインストールすることで USB 2.0 と USB 3.0 を利用することができるようになります。またゲストPCに VirtualBox Guest Additions がインストールされている必要があります。

- VMware Player – VMware Tools をインストールしてすぐに USB 1.1〜3.1 を利用することができます。

グラフィック性能
グラフィックス性能は仮想マシンの画面描写がどれだけ滑らかに動くかに影響します。仮想PCツールがグラフィックボードからどれくらいのVRAM容量を確保できるかが鍵です。ゲームなどをテストする目的でない限りあまり多くのVRAMは必要としませんが少なすぎるとOSのエフェクトも遅くなるなり、操作性も落ちてしまいます。
- VirtualBox – 3Dアクセラレーションを有効にした状態でビデオメモリは256MBまでしか確保できません。しかもDirectX 9とOpenGL 3という旧式のAPIしか対応していません。Windows 10デフォルトのグラフィック設定を動かすのもいっぱいいっぱいといった感じです。スムーズに動かすにはアニメーションやエフェクトの無効化が必要になってくると思います。

- VMware Player 16 – グラフィックメモリを最大8GBも確保できるため多少の3D処理性能を要するソフトウェアやゲームならば動く可能性があります。ホストマシンはDirectX11をサポートするGPUが必要なのでオンボードGPUの場合はIntel SandybridgeやAMD Bulldozer以前のものは使えないことになります。
Linux OSがホストPCの場合はさらに制限がありNVIDIA GPUがない動作しません。VMwareはNVIDIAと提携しているためこういった制限を設けているのだと言われています。

対応する仮想マシン・フォーマット
- VirtualBox – 以下の様々な仮想マシンのディスクフォーマットに対応しています
VDI(Virtual Disk Image)- VirtualBoxのデフォルト形式
VMDK(Virtual Machine DisK)- VMware独自形式
VHD(Virtual Hard Disk)- MicrosoftのHyper-Vのフォーマット
HDD – macOSで有名なParallels Desktopという仮想マシンソフトウェア独自の形式。
- VMWare Player – VMDKというVMWare独自のディスク・フォーマットしか対応していません。
仮想マシンのリモート管理
- VirtualBox – 「phpVirtualBox」というウェブインタフェースがあるため、導入にはひと手間いりますがウェブブラウザを介して遠隔地からVirtualBoxの操作が可能です。
- VMWare Player – リモート管理機能はないです。無償でVMWare製品をどうしても使いたい場合はサーバ管理用の「vSphere Client」といったソフトウェアが別途必要になってきます。
仮想マシン暗号化
- VirtualBox – 仮想マシンのディスクを暗号化する機能が組み込まれています。暗号化方法は極めて簡単です。暗号化形式を選択肢しパスワードを設定するだけです。暗号化ディスクの作成には少々時間がかかり、VMを起動するたびにパスワードの入力を求められます。このオプションを利用するには「VirtualBox Extension Pack」が必要です。
- VMWare Player– 仮想マシンを暗号化する機能はありません。しかしすでに暗号化されているディスクならば読み込んで起動することができます。

結論
当ブログの結論としては以下のようなものになります。
VirtualBox
- 仮想ハードウェアテクノロジーをサポートしていない古いプロセッサを搭載した PC
- 仮想PC をリモートで操作したい
- ホストPC に macOS を使っている
- ホストPC の OS が Linux で AMD GPU を搭載している場合
VMware Player
- 大量のビデオメモリ(VRAM)が必要なプログラムを仮想PCで走らせたい場合
- DirectX 11 を利用したアプリケーションを使いたい
オプションの数、柔軟性という観点では VirtualBox が圧倒しているでしよう。無償のソフトウェアとは思えないほど高機能です。ほとんどの方は VirtualBox で事が足りると思います。
一方で仮想PC に Windows をインストールしてゲームをしたいなどの用途では VMware Player が向いています。

おわり
コメント
VirtualBOXはWindowsXPなど古いOSの時、3Dが機能しませんでした。。
(VMwareでは可)
VirtualBoxでWindowsXPの3D機能が動作しない旨のご指摘
時間ができ次第、確認調査した上で追記させていただきます。
非常に有意義なコメントありがとうございます。
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