MCM(Multi Chip Module)方式は旧来のように単一の大きなチップを生産するのではなく、複数の比較的小さなチップをつなげてGPUを組み上げる方式だ。「チップレット」と言ったほうが馴染みがある人が多いかもしれない。その利点は省電力化、チップの価格を抑えられ、柔軟性とスケーラビリティが高いことだ。
チップは大きくなればなるほどエラーなく生産することが難しくなる。そして歩留まりが低くなればなるほど価格が上昇していってしまう。昨今のグラフィックボードが信じられないような高額な値段で売られているのはGPU Dieが巨大化していることも一つの原因だ。
ご存知のようにCPUに関してはすでにチップレット方式を採用している商品が市場でも多く販売されている。AMD Ryzen CPUなどがその典型例だ。 AMDは自社のCPUのチップレット化に成功したためIntelに打ち勝つことができたと言っても過言ではない。
GPUのチップメーカーであるAMD、Intel、NvidiaはそれぞれMCM方式を採用することが数々のリークから明らかになっており将来的にはどこのチップメーカーもこの方式をとることになるだろう。しかしまだチップ同士をうまくつなぎ合わせ、リンクする技術を獲得していない企業も多いようだ。
一度に多量の計算を並行処理をするのがGPUの仕事だ。GPU内の大量のコアを同期させる技術が最も重要だがMCMはチップが物理的に分かれている。レイテンシーが最大の敵であるゲーミングでは特にこの方式を使うのは難しいと言われている。CPUで培った技術をそのまま採用できるわけではないのだろう。
AMDもNaviアーキテクチャにMCM方式が採用されるという噂があったが見送った。
NVIDIAはAmpereの後継にMCMベースのアーキテクチャを採用したGPU「Hopper」を発表する予定であったが、開発が難航している。
Intel は Xe アーキテクチャでMCMを採用することを兼ねてより発表しており、最も商品化に近い位置にいる。
AMDがGPUチップレットに関する特許を所得
そんな中、去年末(2020年12月)に AMD が高帯域クロスリンク(HBX)を用いたチップレットに関する特許を申請していることが発見された。
書面によれば インターポーザが複数のチップが合わさったチップレットを単一チップと同等の機能、挙動をCPUに提供する。CPUにモノリシックチップだと誤認させる働きをする。
GPUにはCPUと同様何段階もの高速なキャッシュメモリがある。この中でも最も容量が大きく頻繁に使うデータを保管しているキャッシュをLLC(Last-level Cache)と呼ぶ。HBXは2つのチップレットを横断的に接続しLLCのデータを同期する役割を担う。
Sony が開発している PlayStation 用のチップレットとの類似性も指摘された。
まだこの特許がデータセンター向けなどのCDNA、ゲーミング向けのRDNAどちらかに採用されるのかはわからない。両方に採用される可能性もあるしペーパーパテントである可能性も十分にある。
ゲーマーにとって利点は
Intel の Xe アーキテクチャでは今の所、家庭向けには2タイルのチップレットを開発していると発表しており、エンタープライズ向けには4タイルのチップレットを開発している。このため、AMDやNvidiaがコンシューマ向けに多量のタイルを使ったチップレットが今後出してくるということはあまり考えられない。しかしチップを様々な製品に使いまわしできるようになるため価格は格段に安くなる可能性はある。
おわり
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