「ThinkPad E14 Gen 6」は ThinkPad シリーズの中で最安のエコノミー版である Eシリーズの最新版です。おそらく学校法人や小規模事業者をターゲットとしているエントリーモデルです。今回もメーカー様からレビューのため貸し出していただきました。
エントリーモデルと言っても、最上位機種の ThinkPad X1 と同じプロセッサーを選択できるのでスペック上の性能はほぼ変わりません。ただ天板の素材がカーボンファイバーからアルミ合金に変更され、筐体がマグネシウム合金ではなくプラスチック再生材なので重量が若干重く、質感が劣ります。それに内部構造もだいぶ違いがあり、冷却ファンが1基しか搭載していないため冷却性能もやや低いです。
しかし、コストパフォーマンスが非常に良く、拡張性が非常に高い、RJ-45ポートが装備されていたりと X1 にはない特徴もあります。
ギャラリー
遠目だとパッと見 X1 です。大きな違いはロゴが銀メッキですが、デザイン的にはこちらの方が正統派の ThinkPad という感じもします。

ThinkPad と ThinkBook の間の子のような感じです。

天板の形は X1 とそっくりですが素材はアルミニウム合金です。表面の加工もマットフィニッシュではなく、若干グリッターが入ったような硬質な塗装です。

筐体はプラスチック再生素材です。構造は IdeaPad や ThinkBook シリーズと酷似しています。

ThinkPad シリーズは自分でメンテナンスがしやすいよう、フィリップスドライバー(プラスドライバー)で蓋を開けることができます。ただ何箇所か嵌合されているのでギターピックかプラスチックの筐体を傷つけないようなプライヤーを用意する必要があります。

ヒンジは180°ぺたりと曲げられます。

電源ボタンは指紋センサーも兼ねています。HPのようにキーボード配列に混入させるような愚かなことはしていません。誤って押してしまうことはないでしょう。


製品仕様
本機は多くのオプションがあります。用途に合わせて様々なスペックのパーツを選ぶことができます。
※太字はレビュー機に搭載に搭載されているパーツです。
プロセッサー | ・インテル® Core™ Ultra 7 vPro® Enterprise プロセッサー 165U ・インテル® Core™ Ultra 7 プロセッサー 155U ・インテル® Core™ Ultra 5 vPro® Enterprise プロセッサー 135U ・インテル® Core™ Ultra 5 プロセッサー 125U ・インテル® Core™ Ultra 7 プロセッサー 155H ・インテル® Core™ Ultra 5 プロセッサー 125H |
メモリー | スロット: 8GB/16GB/32GB 最大64GB |
ストレージ | 256GB/512GB/1TB SSD |
ディスプレイ | ・14.0型 2.2K IPS液晶 (2240 x 1400) 、光沢なし、ブルーライト軽減 ・14.0型 WUXGA IPS液晶 (1920 x 1200) 、マルチタッチ対応(10点)、光沢なし、ブルーライト軽減 ・14.0型 WUXGA IPS液晶 (1920 x 1200) 、光沢なし、ブルーライト軽減 |
インターフェース | USB4 (Thunderbolt™ 4 対応) x 1 USB Type-C 3.2 Gen 2×2 x 1 USB 3.2 Gen2 (Powered USB) x 1 USB 3.2 Gen1 x 1 HDMI マイクロホン/ヘッドホン・コンボ・ジャック RJ-45 |
カメラ | インカメラ: 全てプライバシーシャッター付き FHD 1080p RGB+IR Hybrid Webカメラ FHD 1080p RGB Webカメラ HD 720P RGB Webカメラ |
バッテリー | 固定式 3セル リチウムイオンポリマーバッテリー 47Whr 固定式 3セル リチウムイオンポリマーバッテリー 57Whr |
レビュー機のパーツスペック
型番:LENOVO 21M7000UJP
メモリ:16 GB DDR5 SDRAM
CPU性能
製品名 | Intel Core Ultra 5 125H |
コード名 | Meteor Lake |
コア数 | 14 |
スレッド数 | 18 |
最大ターボ周波数 | 4.5 GHz |
GPU性能
製品名 | Intel Arc graphics |
最大動的周波数 | 2.2 GHz |
最大解像度 (HDMI) | 4096 x 2304 @ 60Hz (HDMI 2.1 TMDS) 7680 x 4320 @ 60Hz (HDMI2.1 FRL) |
最大解像度 (DP) | 7680 x 4320 @ 60Hz |
DirectX 対応 | 12.2 |
OpenGL 対応 | 4.6 |
OpenCL サポート | 3.0 |
ベンチマーク
再起動した後3分間のクールダウンタイムを設けてから毎回テストを行っています。なるべく同じ条件下でテストを行っていますが、テスト日が大きく異なるため Windows 11 のバージョンにも違いがあります。あくまで参考までに御覧ください。
Windows の電源設定は「最適なパフォーマンス」です。
■ 7-Zip

展開速度の遅さが目立ちました。
■ CineBench R23

NotebookCheck の集計データを元に「5 Ultra 125H」搭載機のベンチマークを比較します。
最大値 | 中央値 | 最小値 | 本機 | |
---|---|---|---|---|
マルチコア | 14564 | 12805 | 9194 | 10262 |
シングルコア | 1735 | 1683 | 1549 | 1728 |
本機はCPUのシングルコア性能を限界近くまで引き出せています。
マルチコア性能は中央値よりかなり低いのが残念なところ。
■ Geekbench 6
- シングルコア スコア:2302
- マルチコアスコア:10248
- OpenCL スコア:23304
最大値 | 中央値 | 最小値 | 本機 | |
---|---|---|---|---|
マルチコア | 11749 | 11412 | 11087 | 10248 |
シングルコア | 2316 | 2288 | 2199 | 2302 |
こちらもシングルコア性能は最大値に迫る数値を出しています。
しかしマルチコア性能は最小値を割ってしまっています。
ディスプレイ

本機はアンチグレア(光沢なし)仕様のIPSディスプレイしかないです。発色は悪くはないですがクリエイティブな作業にはやや不向きです。
エコノミーモデルであるということはわかっていますが、これだけの高性能プロセッサーのオプションが多くありがながら、OLEDディスプレイのオプションがないのは若干チグハグ感が否めません。まあこれにOLEDつけられたらわざわざ高い上位モデルを買う大きな理由の一つがなくなってしまうのでメーカー側の事情はわからなくもないですが…
しかし最大 2.2K の高解像度パネルが選べのは嬉しいです。ぐっと情報量が増え、作業領域が広がります。
ちなみにタッチパネルも選べます。

バックライトの照射ムラが若干大きい、という印象です。フリッカー現象などは確認できず安定しています。

キーボードとトラックパッド
キーボードは上位モデルと変わらないやや深めのキーストロークですが打鍵感が良く、使っていて心地が良いです。またわずかに内側にくぼんだシリンドリカル型のキートップなので余計な指の滑りをなくしてくれるので疲れにくいです。

旧来の ThinkPad シリーズ同様、左側の Fn と Ctrl キーが業界標準と逆になっています。
キーピッチは 19mm とフルサイズキーボード変わらないので窮屈に感じることはありません。
ただ、エンターキー周りのキーが少し横狭くなっているのでタイプミスを誘発するかもしれません。すぐ慣れると思いますが、同社の IdeaPad シリーズなどの一般消費者向けノートPCの方がキー配置はバランス良く感じます。
タッチパッドは昨今のハイエンドノートPCのような感圧タッチ機能はついておらず、ポリマイヤー製なのでガラス素材よりも質感や静音性は劣りますが、反応は悪くなく使い易いです。
ただタッチパッドを重宝する人にはやや小さく感じるかもしれません。

ThinkPad シリーズのアイコンでもあるトラックポイントも搭載しています。手をホームポジションから動かすことなくポインターの操作ができるので使いこなせたら作業効率が向上します。
高い拡張性
本機は意外にも拡張性がかなり高いです。DRAM メモリーは2つともスロット式で、NVMe SSD も交換できます。更にType 2280 M.2 SSDの空きスロットが一つあり、デュアルドライブ構成にすることができます。
簡単にデュアルブート環境が構築できてしまうわけです。多くのITエンジニアや情報系の教育機関に通っている学生にも嬉しい仕様です。
また Wi-Fi モジュールもソケット式なので取り替え可能です。モニターモードを備えたチップセットが載った Wi-Fi モジュールを入れ替えるなど面白いこともできそうです。
携帯性と持久力
重量は約 1.47 kg と14インチのノートPCとしては普通です。モバイルノートほど軽量ではありませんが、持ち運ぶのは苦ではありません。
ACアダプターの重量は 297 g です。若干大きめなのでかさばります。

圧倒的なコストパフォーマンス
執筆現在(2025年4月24日)ベースモデルは税込みで ¥128,810 と法人向け Core 5 Ultra 125H + 16 GB DRAM + 512 GB SSD 搭載の14インチノートとしては圧倒的に安いです。富士通やDELL、HPといった主要メーカーの価格を大きく下回っています。
Lenovo ThinkPad E14 Gen 6 | 128,810円 |
DELL Latitude 5450 | 168,011円 |
HP EliteBook 1040 G11 | 201,080円 |
富士通 LIFEBOOK U9414/RW | 225,060円 |
まとめ
特徴
- 打ち心地が良いキーボード
- 高コストパフォーマンス
- 選択できるプロセッサーが豊富
- シングルコア性能が高い
- 拡張性が非常に高い
- (2x SO-DIMM, 2x M.2 SSD, Wi-Fi)
残念な点
- ディスプレイはノングレアIPSパネルしか選択できない
- 標準バッテリーだと物足りない
- マルチコア性能がいまいち
おわり
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