NVIDIAの仮想通貨マイニング専用グラボはPCゲーマーを救えるのか?

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概要

NVIDIAは先月これから発売されるGeForce RTXの採掘処理速度であるハッシュレートをBIOSで制限し、仮想通貨マイナー向けに仮想通貨マイニング専用のボード「CMP(Crypto Mining Processor)」を新たに発表した。表向きは現状のゲーミングGPU不足を解決しよう……という試みを行うようだ。

マイニング性能に制限をかけるのは一番需要が高いと言われている RTX 3060 だ。 Steamのデータによるとまだ多く(10%以上)のゲーマーがGTX 1060で遊んでおり、乗り換えるならばこのカードになってくるのではないかと言われている。しかし先週(2月19日)発売されたRTX 3060は多くの国で一瞬で売り切れ状態となってしまったことからゲーマーがいつ手をつけられるようになるかはわからない。

実はNVIDIAは過去にも「Nvidia GP106-100」というGT 1060 のディスプレイポートを廃止してドライバで機能を制限したマイニング専用モデルをこっそり発表してる。だがこの時はほどんどGPUの供給不足を改善できなかった。

本記事では今回のこのNVIDIAの動きは効果があるのか?PCゲーマーを救えるのか?ということの私見を述べていく。

多くの仮想通貨マイニングには効果がない

2月19日に発売された RTX 3080 だが、発売前からなぜかいくつものカードが世に出回っておりベンチマークや仮想通貨マイニングの性能をテストされた。

その結果はNVIDIAの仮想通貨マイニング性能の制限はイーサリアム(Ethereum)を探知した時しか作動しないようになっていることが判明。他の仮想通貨は普通に制限なくマイニングできてしまうのだ。いかにNVIDIAのゲーマーを大事にしているというのがただのポーズであったのかがわかる。

転売屋が闊歩しているせいもあるが一瞬でRTX 3060が売り切れたのは仮想通貨マイナーにこの情報が広く知れ渡ってしまったからだろう。

Despite Nvidia's Anti-Mining Lock, RTX 3060 Can Still Earn Up To a Day Mining
Is it all just a complicated PR stunt?

中古市場を破壊

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仮想通貨マイニング専用ボードはマイニングブームが過ぎ去ったらただの廃棄物と化す。環境に悪いばかりではなくこれらのボードが大量に生産された場合、普通のグラボの中古市場への流通量が減り店頭の新品販売価格がなかなか下がらない可能性がある。

GP106-100のときのように改造ドライバが登場すれば変わり者がまた買うかもしれないが多くの人はディスプレイポートが1つもないグラボなぞ買いたくないはずだ。

前回マイニングブームが去ったあとに中古市場でGTX 10シリーズが溢れかえった。このため高額なRTX 20シリーズの発売当初販売は好調とは言えなかった。

仮想通貨マイニングに使ったGPUなどボロボロですぐに壊れてしまうからどっちにしろ同じことだと思う方もおられるだろう。しかしGPUを大量購入している発掘業者は寒冷地に施設を建てた上で排熱やエネルギーロスを減らすために低電圧化をしてGPUがもっとも効率が良く動作する設定を施している。一部のマイニング企業は定期的にボードを分解クリーニングまでして大事に使っている。このため下手にゲーマーがオーバークロックして酷使したGPUよりも長生きする可能性すらある。

現在、世界は深刻なシリコンの供給不足で自動車に搭載する制御チップでさえ生産が滞っている。

NVIDIAによればこれらのマイニングGPUは規格落ちしたチップや一部は前世代のTuring アーキテクチャGPUを使っているので GeForce の生産に影響を及ぼさないとのことだ。しかし、これには何の保証もない。シリコンチップは生産を重ねるごとに最適化され、歩留まりが高くなっていくため規格落ちチップの供給が間に合わなくなり良質なチップもマイニング専用グラボに使われるようになる可能性はある。

マイニング専用GPUを作るのではなく、単純に規格落ちしたシリコンをRTXシリーズとは別の廉価モデルラインアップとして売り出したりGPU性能をあまり要求しない法人向けPCに出荷しても問題ないのではないだろうか。

1日に生産できるシリコンウェーハは限られている。仮想通貨マイニングにしか使えないボードにわざわざ生産リソースを割くのは愚かな行為だ。

誰が得するのか

この処置でおそらく品不足の解消には全くならないだろう。

そして結局マイニング専用ボードを製造して一番得をするのはNVIDIAだ。短期的には高額で質の悪いチップを売りさばくことができ、長期的にはマイニングに使われたボードを中古市場に売られることを防ぐことでグラボの販売価格が下がりづらくなる。さらにゲーマーのことをちゃんと考えていますよ、というアピールにもなる。実際その効果は絶大でメディアのほとんどは好意的に取り上げている。

NVIDIAはついこの間まで仮想通貨マイナーに直接GPUを売ってたのだ。こういう業者は価格が2倍だろが平気で金を出すため大変ありがたいお客様のはずだ。NVIDIAも上客に急に態度を変えて殴りかかったりはしない。

NVIDIA Allegedly Sold 5 Million Worth of Ampere GeForce RTX 30 GPUs To Crypto Miners
Financial analysts have suggested that NVIDIA sold 5 Million worth of GeForce RTX 30 Ampere gaming GPUs to crypto miners.

いずれにしろNVIDIAがレファレンスモデルを出さなかったこともあり、RTX 3060は発売日からAIBパートナーのボード販売価格が高騰した。本来は35,000円くらいで販売されるはずのものがおよそ2倍にまで跳ね上がっている。この程度の性能のグラボでこの価格は一般の消費者にとってとてもじゃないが良い買い物とはいえない。RTX 3060はレイ・トレーシング性能以外はRTX 2060よりも10%くらいしか性能差がなく、性能の停滞期に入ったと見ても良いかもしれない。

おそらく前回のマイニングブームのように夏頃にはすっかり熱も冷めて市場にRTX 20シリーズやAMD Radeon RX 5000シリーズなどの中古品が出回ってくるだろう。この際RTX 30シリーズがあまり出回らず店頭価格もたかどまりしたままだったらマイニング専用ボードなぞ作ったジェンスン氏を恨もう。AMDがこの動きを真似ないことを祈るばかりだ。もっともRDNAアーキテクチャ自体あまりマイニングに向いているとは言えないのでNVIDIAみたいにチップの流用は難しいだろう。

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