Archer AX53 (AX3000) は TP-Link 製ルータのラインナップの中でミドルクラスの無線LANルータです。巨大な4本のハイゲイン・アンテナが特徴的な商品でコストパフォーマンスが非常に高いです。
発売から1年ほどたっており、2023 年現在では 7,000円台以下 と発売当初から 20% ほど価格が下がってお買い得な商品となっています。Archer AX53 を約4ヶ月間使ってきた所感や同価格帯の製品との比較などを載せていきます。
外観
これは購入して箱から出したばかりの状態ですが、すでに指紋がついてしまっているのがわかります。このつるつるした部分は汚れがすぐについてしまい、きれいに保つのがかなり難しいです。
本体裏側には製品情報と Wi−Fi ID、パスワードが表記されています。左の QRコードをスマホでスキャンすれば、WebUI に移動できます。
裏側には滑り止めが一切ないので安定したどころにおいた方が良いでしよう。
右から、電源ボタン、LANポート×4、WANポート、WPSボタン、リセットボタンになります。
メディアサーバなどの機能はないため、USBポートはありません。
同価格帯製品との比較
下のテーブルチャートは同価格帯かつ Wi-Fi 6 規格、IPv6 対応の Buffalo と NEC の無線LANルータを比較したものです。
Archer AX53 (2022) | WSR-1800AX4S (2021) | Aterm WX1500HP (2022) | |
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Wi-Fi 速度 | 5 GHz:2402Mbps 2.4 GHz:574Mbps | 5 GHz:1201Mbps 2.4 GHz:573Mbps | 5 GHz:1201Mbps 2.4 GHz :300Mbps |
OFDMA | ◯ | ◯ | ◯ |
TWT | ◯ | ◯ | ◯ |
MU-MIMO | ✗ | ◯ | MIMOのみ |
Wi-Fi 暗号 | WPA WPA2 WPA3 WPA/WPA2-Enterprise | WPA WPA/WPA2-mixed WPA2 WPA2/WPA3 WPA3 | WPA2 WPA/WPA2 WPA3 WPA2/ WPA3 |
アンテナ | 外部アンテナ × 4 | 内蔵アンテナ 5 GHz:2本 2.4 GHz:2本 | 内蔵アンテナ 5 GHz:送信2 × 受信2 2.4 GHz:送信2 × 受信2 |
CPU | デュアルコア | ? | ? |
有線ポート | LAN:1Gbps×4 WAN:1Gbps×1 | LAN:1Gbps×4 WAN:1Gbps×1 | LAN:1Gbps×3 WAN:1Gbps×1 |
VPNサーバー機能 | OpenVPN PPTP VPN | PPTP VPN | ✗ |
電源 | 12.0 W(最大) | 11.0 W(最大) | 11.5 W(最大) |
メッシュ機能 | OneMesh | EasyMesh | ✗ |
Alexa対応 | ◯ | ✗ | ✗ |
価格.com最安値 | ¥6,980 | ¥6,795 | ¥6,490 |
Archer AX53 は他の同価格帯製品よりも性能が高く、機能も豊富なことがわかります。
複数のデバイスで同時に超高速通信が行える MU-MIMO 技術が非搭載なのが唯一惜しいところです。Archer AX53の上位機種にあたるArcher AX73 には搭載されています。
ただ接続デバイスが増えるとデメリットにもなりうる機能なのでそこまで必須とは言えないと思います。
Wi-Fi シグナル強度やいかに
おそらく読者様が一番気になっているであろう Wi-Fi の性能について先にお話します。
正確に性能を測ったわけではありませんが、I-O DATA の「Wi-Fiミレル」を使って自宅のヒートマップを作りました。この際、プロバイダー提供の無線LANルーター (SoftBank光BBユニット) のシグナル強度も測り、比較してみました。
緑色が濃い場所ほどシグナルが強く、赤色が濃いほどシグナルが弱いことを表しています。
ご覧の通り、Archer AX53 のほうが緑色が多いことがわかります。SoftBank光BBユニットでは1階部分はすべて赤色になっていますが、Archer AX53 のマップでは黄色いところが増えています。場所や時間にもよりますが 10%~30% のシグナルの増加がみられました。
優秀と言われている新型 SoftBank光BBユニット と比較したものなのでかなり良い結果と言えるのではないでしようか。
Wi-Fi 速度も良好
平日の夜9時ごろに Galaxy Note 10+ で測定した結果です。Wi-Fi速度も良好でインターネット速度の軽く2倍を計測しました。
最大42台同時接続可能とパッケージに記載がありますが現実では難しいと思います。我が家では5台くらいデバイスをつないでいますが、ルーターのCPU使用率の3分の1、メモリ容量の半分くらい消費しています。実際の運用を考えたとき 15~20台 くらいが精一杯ではないでしようか。
さらに戸建て3階建て、マンション 4LDK までが推奨環境とパッケージには表記されていますが、これは木造住宅を前提としているものと思われます。我が家は全館床暖房の2階建てですがルータと別の階だと Wi-Fi 接続が途切れるときもありました。アルミの板で電波を遮断されてしまうので当然ですが、床暖房がある建物ではメッシュ機能を利用する必要がありそうです。
高い安定性
我が家では AX53 と RE450 でメッシュ機能を利用していますが購入してから4か月間電源を切ることなく使い続けています。接続が不安定になったり途切れるということはありませんでした。主観的な感想になってしまいますが安定性には満足しています。
価格.com の掲示板などでは接続が不安定になったり、遅くなったりするという書き込みをたまに見かけたため、環境によって違いがあると思います。プロバイダによっては公式ルーターでないと IPv6 通信が行えないなどの制限があります。プロバイダのルーターを置き換えたい場合は事前に確認が必要です。
これはどこのメーカーのルーターの口コミにもあるものなので実際に試してみるしかないでしょう。
優れたUIのスマホアプリ
TP-Link はルータ機能を持つ製品で横断して使える「TP-Link Tether」というスマートフォンアプリケーションを公開しています。
セットアップ方法は付属しているクイックセットアップガイドが分かり易く説明しているのでここでは省きます。スマホで本体裏の QRコードを読み込んで Wifi 接続、Tether アプリを起動してウィザードに従えばすぐに設定完了できます。
まあ、今どきのルータは大体同じように接続・設定が簡単にできるので特別なことではないです。
このアプリの優れているところはデザイン言語が一貫しており、見やすいことです。スッとインターフェースが目に馴染みます。このアプリから簡単な設定を行えますが OFDMA や TWT などの詳細な設定ができません。ルータの取り扱いに慣れている方は最初からブラウザから操作ができる WebUI を使ったほうが良いかもしれません。
TP-Link は WebUI のエミュレーターを用意しているので体験してみたい場合はこちらで購入予定の機器を選んで操作してみましよう。
簡単で快適なメッシュ機能
AX53 は TP-Link のルータラインナップの中でもメッシュ機能が使える一番安いモデルです。
メッシュ機能とは、複数のルータや中継機を使って一つの Wi-Fi を拡張するというものです。旧来の中継機を利用して Wifi の有効範囲を拡大しようとするといちいち手動で最寄りのルータに切り替える必要がありました。この拡張機能を利用すると複数の機器があたかも一つの Wi-Fi ルータであるかのようにシームレスに切り替えができます。
TP-Link は OneMesh、 Buffalo は EasyMesh、NEC はメッシュ中継とそれぞれ呼びかたが違い、同じメーカー同士の機器でないとメッシュ機能がリンクできません。業界標準ができてメーカーが違っても接続できるようになれば便利なのですが実現するのは難しいでしよう。
鉄筋コンクリート造、床暖房を備えた家では必須と呼べる機能ではないでしようか。
自宅が床暖房を導入しているので中継機を使ってメッシュ機能を使ってみました。謳い文句どおりの効果で快適です。
VPNサーバー機能を搭載
Archer AX53 には VPN(仮想プライベートネットワーク)サーバーとしての機能があります。これが何かというと外出先から自宅のインターネット環境にアクセスできるようになるものです。
公共 WiFi や野良 WiFi を使いたいとき、心配になってくるのは通信を傍受されたり、フィッシング攻撃の被害をうけることです。この VPN サーバー機能を利用することで直通の専用トンネルを通じ自宅のインターネットプロバイダに接続するのでそのリスクが大幅に減ります。
最近は有料の VPN サーバーを利用している人が増えてきましたが、これは無料で使えるのでお得です。
更にリモートで自宅のルータや IoT デバイスを制御できるので何かと便利です。
AX53 は安全性が高い OpenVPN だけでなく、高速で配信などに向く PPTP VPN にも対応しています。設定も至極簡単です。
ペアレント・コントロール機能はイマイチ
お子様がいる家庭ではペアレントコントロール機能が必要になってくると思います。根本(ルータ)から設定をしておくことで制限を機器を横断して行えます。
さらに個々のデバイスがアクセスしたサイトの履歴が閲覧できます。
残念ながら無料プランで制限できるのは利用時間帯と利用デバイスくらいのものです。月々数百円払うことで様々な機能をアンロックできますが、キッズタイマーくらいは無料で提供しても良いのでは、と思いました。
コンテンツ・ブロックもできますが HTTP に限られます。いまどきアダルトサイトですら HTTPS 対応のため、あまり意味のある機能とは言えません。
ブロックしたいサイトがある場合はブラウザや OS付属の機能、Windows Family Safety や Googleファミリーリンクを利用しましよう。
まとめ
現状のプロバイダの無線LANに不満を感じており、予算が限られている人にはおすすめの商品です。
他の同価格帯他社製品よりも高性能で高機能です。
4本のハイゲイン・アンテナの性能は見かけだけではなく、確実に有効接続範囲を拡大してくれます。またデュアルコアCPUを搭載しているので多くの負荷を一度に捌けます。
また TP-Link は簡易的な自宅 VPN を開設したい方、中継機も安いのでメッシュ機能を低価格で揃えたいときにおすすめです。上手にお買い物ができれば1万円以内でメッシュWi-Fiを構築できます。
おわり
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