SSDをノートパソコンに導入して驚いたのがなにもせずともWindows 10がSSD(ソリッドステート・ドライブ)を自動的に判別して最適な設定にしてくれた。Windows 10ではTRIMの自動化はもちろん、 デフラグやスーパーフェッチの勝手に無効化してくれる。
Windows XPやWindows Vistaの場合はサードパーティのツールを使用して手動でTRIM(トリム、削除可能領域を予約する機能)を有効にしたりしなければならなかった。OS自体がSSDのインストールを想定していなかったのとSSDのコントローラが未成熟だったこともあって様々な設定方法が出回った。
しかし、Windows 10 / 11においてはウェブ上で紹介されているSSD延命策や高速化設定集などは時代遅れだったり、ほぼ意味をなさないかシステムの不安定化を招くだけだ。
延命のための最適化は必要か?
最適化設定を紹介するサイトではSSDの寿命を伸ばすこともできるという旨の解説がなされていることがほどんどだ。2020年現在、そもそもOSのシステム深部に関わる設定を変更してまでSSDへのデータ書き込み量を減らす必要があるのだろうか?という根本的な疑問から見ていこう。
「The Tech Report」というハードウェアニュースや検証を行っているサイトが2015年に複数のメーカーのSSDを壊れるまで書き込みを続けるという過酷なストレステストを行った。テストは18か月間にもおよび、とうとう最後に残ったサムスン840 PRO(256GB)も力尽きた。 600TB(テラバイト)もの書き込みをするまで書き込みエラーは起きなかったという。その後記憶領域を徐々に失いながらも2.4PB(ペタバイト)もの書き込みでドライブが停止。これは毎日100GBの書き込みをしても16年間エラーなく運用できる計算になる。よほど大きな動画を毎日編集やレンダリングしたり、ビッグデータの処理を常に行わせるような用途でない限り数年で寿命を迎えるということはないだろう。
Tech Report – The SSD Endurance Experiment: They’re all dead
また「c’t」というドイツのコンピュータ雑誌ではSamsung 850 PROが9.1PB(パタバイト)もの書き込みを記録した。
The guru of 3D – Endurance Test of Samsung 850 Pro Comes To an End after 9100TB of writes
この通り一般的な使い方をしていれば書き込み限界によるエラーが発生するということはSSDに欠陥でもなければまずないと言って良い。その前にトンネル酸化膜の経年劣化により徐々に寿命を迎えるだろう。この劣化の速さはメーカーによってまちまちだが、新品に近い状態のSSDでも10年くらいでデータが自然蒸発しはじめると言われている。
メーカーも最近は3年保証、商品によっては5年保証など強気に出ているのも頷ける。5年も使っていたら更に大容量で性能の良いドライブが出てくるだろうしいい加減買い換えるだろう。
SSD導入に際して一番重要なこと
本筋とはズレてしまうが、そもそもハズレSSDを買わないことが最重要だ。下記事で載せているが、バルク品やPCメーカーのオリジナルブランドなど市場には性能がかなり怪しいハードが出回っている。半導体の品質だけでなくDRAMの有無やコントローラの性能でもかなり違ってくる。Western DigitalやSamsungなど信用できるメーカーのものを買うことでこのリスクを最小限に留めよう。
ありがちな”SSD最適化設定”に対する反論と解説
ここからはよくSSDを最適化するとして紹介されている設定が実は無意味、あるいはWindows 10が勝手に設定変更してくれているというものをご紹介。
システム保護の無効化
実はこの保護機能、デフォルトで無効になっているシステムが結構存在する。マイクロソフトは明確な回答をしていないが、システム保護機能が結構な容量を取るため、タブレットなど、容量の少ないドライブしか搭載されていないとWindows 10が判断した場合、デフォルトで無効にしているのではないかと言われている。 優秀な機能ではあるが他にもシステムをバックアップする手段が無数にあるのでマイクロソフト社内でその必要性に疑問が出てきているのだろう。
無効化することで多少のパフォーマンス改善を期待できるかもしれないがHDDの頃に比べその差は微々たるものだ。ドライブ容量に余裕があれば積極的に使っていった方がストレスの軽減と時間の節約になる。
デフラグの無効化
書き込み量を減らすために無効化しろというサイトもあるが旧来のようなデータ配列いじってファイルの断片化を解消するデフラグはWindows 10が勝手に無効化してくれる。さらにパフォーマンス低下防止のために自動で定期的にTRIMする設定もしてくれる。
最新バージョンのWindows 10ではSSDに対して手動でデフラグを実行することすらできなくなっている。 TRIMのタイミングをいじるよう解説しているサイトもあるが瞬時に終わるのではっきり言って必要ない。Windows 10に任せれば良い。
SysMain(旧SuperFetch)の無効化
Windows 10が勝手に無効化する。ユーザがスーパーフェッチを有効化している状態だとWindows 10がドライブを自動判別。SSDなどのアクセス速度の早いドライブでは無効化しHDDなどの遅いドライブで有効化してくれる。 なので一見有効化されているように見えても無効になっている場合がある。Windows 7だとSSDではこのような自動判断はしてくれず、SSDが一つでも搭載されているとスーパーフェッチは全ドライブで無効化される。 搭載されているSSDが激遅な場合有効化されることもあるそうだ。
仮想メモリ(ページファイル)の無効化
無効化すると正常に動かなくなるアプリ、プログラムが出てくる可能性がある。自動的に管理させるのが得策。たくさんDRAMを積んでればWindows 10が勝手に空き物理RAMを優先して使ってくれるし自動的にページサイズを調整してくる。考えなしに無効化してシステムが不安定化する要因トップ10くらいには入ってそうだ。
休止状態の無効化
SSDなら起動もシャットダウンも早いから必要ないという人もいるが高速なSSDでこそ真価が発揮される機能だ。電源が確保できない状態で重要な編集作業を素早く保存できるのはかなり有用。忙しい人は積極的に使っていきたい機能だろう。
インデックスやWindowsサーチの無効化
SSDはインデックス機能なぞいらないと解説するサイトが多い。だがこの機能が無効化されているとWindowsはユーザが検索機能を利用するたびにドライブ内すべてを検索しなければならずSSDといえど多少時間がかかるのとプロセッサにかなりの負荷がかかる。SSDのI/Oがいくら早くとも他のハードがボトルネックとなることも多々ある。インデックス機能は瞬時に全文検索ができる優れた機能だ。もし全く検索を使わないというのであれば無効化してもよいだろうがOFFにしても差してパフォーマンスの違いはわからないだろう。
まとめ
Windows 10は勝手にSSDに最適な設定をしてくれるので余計なことをしなくても良い。 Windowsはプライバシーにおいては全く信用できず、Linuxなどに比べカスタマイズ性が非常に低くいという問題もあるがこれはまた別の話。それと引き換えにハードウェアの自動判別やドライバの自動インストールなど、オートメーション化が非常に洗練されてきている。Windowsを信じよう。
SSD本体に関しても容量の増加とコントローラの高性能化により巷で言われているよりもずっと耐久性が高くなってきている。ちゃんとしたメーカーのSSDを購入することだけに注意すれば良いだろう。
ユーザ側がやっておくべきことはSSDやマザーボードのファームウェアを常に最新のものしておくことと、UEFI(BIOS)の設定くらいだ。
もっともメジャーなメーカー製のハードウェアを使っている場合はWindows Updateが勝手にファームウェアを更新することがあるのでその作業すら不要なことが多い。
ネットに転がっているおすすめ設定や高速化ソフトなどは体感できるほどのものはないしデメリットもある。調べるだけ時間の無駄だ。
それよりも不必要にPCのリソースを食う変なソフトや使わないブロートウェアをインストールしないことのほうが重要。1ヶ月以上使っていないソフトなどがあったらさっくりアンインストールしてしまおう。
おわり
コメント
通りすがりの者ですが、非常に勉強になりました!
ありがとうございます!
「Windows 10 では TRIM の自動化はもちろん、 デフラグやスーパーフェッチの無効化を行ってくれる。」
と冒頭で述べていて、さらに「最新バージョンの Windows 10 では SSD ドライブに対して手動でデフラグを実行することすらできなくなっている。」と
述べていらっしゃるが、
一番簡単に確認できるデフラグに関して当パソコン(Windows10 Ver.1909)で確認してみたところ、
普通にドライブの最適化が可能であり、「状態も最適化が必要です」との現在の状態のステータスとなっていた。
このページに記載されている内容の信頼性は?であると思いますが…
記事の中でも説明していますが、最新のWindows 10においてディスクドライブで行うようなデータ配列を入れ替えて整理する「デフラグ」をSSDに対してできなくなっているのは確かです。
SSDには機械的な可動部はなく半導体素子メモリを使った記憶媒体なのでデフラグをする必要がないのです。
SSDにおいての「最適化」=「TRIMコマンドの実行」です。
自身のシステムにSSDが搭載されている場合 Windows は自動的にそれを検知して「ドライブの最適化」でデフラグの代わりにTRIMを実行するようプログラムされています。
SSDはデータをユーザのインプットで削除しないという特性上、未書き込みの領域がなくなると使って良い領域を調べるのにほんの少しの時間がかかります。
TRIM は必須ではないですが、TRIM は SSD に使って良い領域を事前に通知してくれるのでやらないよりもやったほうがパフォーマンスが維持されます。
通常はOS側が勝手に実行のタイミングをスケジューリングしてくれますが、されてなかった場合週1回程度行うようスケジューリングすると便利ですよ
>デバイスの書き込みキャッシュの無効化
有効状態であると、Windowsは一時メモリに一度データを蓄えた後、随時SSDに書き込みを行うと言う機能だと認識しています。
その場合、電源喪失時のトラブルは、無効化にしておいた方が起こりにくいと思えますが、間違っているでしょうか?
コメントありがとうざいます。
ご指摘通り内容があべこべで必要のない項目ですね。
修正させていただきます。