アシダ音響「ASHIDAVOX ST-90-05」を実機レビュー

3.0

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どうも、理想の軽量ヘッドホンを探し求めている者です。

一目惚れして購入したアシダ音響さんのオンイヤーヘッドホン「ASHIDAVOX ST-90-05」をレビューしていきます。

デザイン

外見は昔の図書館においてそうな形のヘッドホンです。

一切無駄を削ぎ落としたかのようなデザインですが質感・品質はなかなかのものです。

ハウジングも無骨です。ベントホールなどは一切ないため耳に密着させると音漏れがかなり少ないです。

ハウジングとバンドとのジョイントも少し動くので頭や耳の形状にあわせて多少の融通が利きます。

装着感

装着感はオンイヤー式の割にかなり良いと思います。イヤカップも柔らかく側圧もちょうど良いです。

ただ所詮は合皮なので長時間つけていると耳が若干痛くなってきます。柔らかいウレタンイヤパッドのオプションがほしいところです。

アジャスターの長さは割と長く、大きめな筆者の頭にも十分にフィットさせることができました。

重量は 110g ほどしかなく、5分もすれば付けているのを忘れるほど軽いです。

品質・堅牢性

ヘッドバンドも頑丈です。かなり力がいりますが自分の頭の形に合わせて少し成形することができます。

聞くところによると医療用・業務用のケーブルが使われてるようで分厚く滅多なことでは断線しそうにありません。特殊なスリットが入っており絡まりを防止します。

ケーブルは 1.2メートルと長いです。

ジャックは昔ながらのL字型で結構な厚みがあります。

耳パッドを外した状態です。小さなヘッドホンとは裏腹に大口径のサウンドドライバーが使われていることがわかります。

四方にあるフィリップスヘッドネジをはずしたら中身を見ることができます。

中身

これ以上ないシンプルな構造ですが露出している銅線がほとんどないため、はんだ付け技術の高さが伺えます。ここらへん海外メーカーだと雑で故障の原因となることが多いです。

ドライバユニットはハウジングにガッチリと接着されているので簡単には取り外せそうにありません。

仕様など

形式ダイナミック型
ドライバΦ40mm
インピーダンス40Ω (at 1kHz/1mW)
音圧感度104dB/mW
最大入力1,000mW(IEC)
再生周波数帯域5 ~ 40,000Hz
コード長約1,500mm
プラグΦ3.5mm 金メッキステレオプラグ L型
質量約110g(コード含まず)

音圧感度、再生周波数帯域共にスペック上は素晴らしく、インピーダンスも40Ωで再生できるというのも個人的にはグッドです。

音質について

第一印象

初聴で驚いたのが音の出の良さです。低音域がかなりブーストされているのか普通のヘッドホンでは聞き取れないような風音やノイズといった環境音まで聞き取ることができました。そういった意味で昔の業務用ヘッドホンのDNAが本機にも受け継がれていると感じさせられました。

音楽を聞いた第一印象は悪い意味で低音域がものすごいことです。しかも全体的にもやがかかったようなあまりクリアではない音にもかかわらず高音がキンキンと不快な音をたてるため思わず顔をしかめました。ボーカルが入る曲はややボケていて遠くで歌っているような不可思議な感じ。楽器の音と混ざりあったようななんとも言えないサウンドでした。貧乏学生だった頃に買った「パイオニア SE-M521」がぼんやりと思い浮かびました。入門者用にありがちなバスブーストされまくったヘッドホンです。

低音がものすごく強調されたヘッドホンなので「この曲のベースこんな感じだったんだ」という再発見があって面白いですが、ボーカルを集中して聞きたい方にはあまり向かないヘッドホンだと思います。高音が密閉型にありがちな雑さなので女性ボーカルの曲が物足りなく感じてボリュームを上げるとハウジング内で音が反響するようなキンキンとした不快な音がして慌てて音量を下げることになってしまうことが何度もありました。ボワッとしているかと思いきや中音の細かな音は正確に表現できているので決してドライバーが壊れているわけではなくそういう音作りなのでしょう。

特に讃美歌などを聞くとこのヘッドホンの弱点が浮き彫りになります。それぞれのパートを聞き分けづらく、CD音源を聞いているはずなのに臨場感が消え、00年代のホームビデオ音源を聞いているような錯覚に陥ります。本来は風が耳元を吹き抜けるような音色を奏でるオルガンも精彩を欠く古めかしい音になってしまいました。イコライザーを使って多少バランスはマシにできましたが耳閉感は直しようがありませんでした。

YouTubeにゼンハイザーとの比較動画を投稿してくれている方がいました。まさにこういったサウンド・プロファイルのヘッドホンです。

コメント欄に

「ASHIDAVOX (dont know what is it) – is complete crap, sorry man. Sennheiser 599 sounds good.」
「ごめんけどASHIDAVOX(というのがなんなのか知らないけど)は完全にガラクタだよ。ゼンハイザー599は良いね。」

という2年前に投稿されたあまりに率直な英文コメントがあり、苦笑と共に妙に納得してしまいました。価格差が大きすぎるゼンハイザーと比べるのはあまりに酷ですがキレイで明瞭なサウンドが出るヘッドホンと比べるとこのような感想になってしまうのでしょう。私は本機をガラクタだとは思いませんがだいぶクセが強めのヘッドホンだと感じました。

ベースをゴリゴリに効かせて楽しい音楽、例えばヒップホップやアコースティックな音楽を楽しめるヘッドホンです。またアナログ音源に迫力を出したいときなどにも良いかもしれません。ですがクラシックや最近の曲とは相性があまりよろしくないように感じます。他のヘッドホンで聞こえていた高音の電子音が本機では聞こえづらい、良さが消えてしまうということが結構あります。

まあこのサウンドが好きだという方も結構おられるようで単純に好みの問題なの可能性もあります。

エイジング

エイジング、英語で言うところの「Burn-In」というものにも挑戦しましたが結論から言うと変わりませんでした。

ネットのレビューだとやれ「10時間聞き続けたら膜が取れたようなクリアなサウンドになった」だの「ピンクノイズ100時間流したら世界が変わった」だの書かれていましたが、気のせいだと思います。

自分は1週間ほど本機で耳を慣らしたところ勝手に脳が補正しだしたのかこもった音は多少マシになったように感じましたが、2日ほど他のヘッドホンを使って改めてこれを着けると「やっぱり音がこもってるしベースも大げさだなぁ」という感想に落ち着きました。こういう性質のヘッドホンなのです。

それに長い歴史のある名門メーカーさんがまさか未完成品を売るなんてことはないでしょう。

総評

総評としてはオンイヤーヘッドホンにしては音質は良いが音がこもっていて低音が強く高音が雑なためクセがあって人(曲)を選ぶ。音漏れが少なく軽量で丈夫なため携帯性は良好。デザインもレトロチックでかわいいので首に引っ提げてお出かけするのも良いでしょう。

  • Pros 良い点
    • 堅牢な作り
    • 軽量
    • デザインが個性的
    • 品質が良い
    • 音の出が良い
  • Cons 悪い点
    • こもった音
    • 高音域が雑
    • 低音域が強調されすぎ

日の丸ヘッドホンということで音質への期待感があまりに高かったのでガッカリした気持ちが上回ってしまい、辛口なレビューとなってしまいましたが決して悪いヘッドホンではないと思います。格安ヘッドホンやイヤホンからの乗り換えでしたらさぞ感動することでしょう。ただネット上の評価やメディアの取り上げ方は過大なものだと感じました。

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同じ暗め or 暖かめのサウンドがお好きでしたら PortaPro (ポタプロ)KPH40 のほうがバランスが良くいろんなジャンルの曲を楽しめると思います。まあポタプロは音ダダ漏れだし断線しやすいなどの欠点はありますが。

デザインと造りはものすごく好きなのでドライバーユニットだけ入れ替えて改造したいくらいです。これ(ST90-05)の上位版にあたる ST-90-07 はモニター用でクリアな音を奏でるという評判がありますので気になるところではあります。

おわり

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