Wear OS がこの先生きのこるためには

スマートウォッチは絶対に流行らないと思っている方も結構いるだろう。しかしスマートウォッチ市場はゆっくりではあるが拡大を続けており、所有者も増えている。様々な調査結果を見る限り、大雑把なマーケットシェアは Apple 40%、 Fitbit 20%、Samsung 10%、その他と言ったところだ。 Wear OS のシェアはその他に含まれるわずか10~5%に満たない。

スマートウォッチ自体高いポテンショルを秘めていると思う。Apple は Watch 4 にユーザがデバイスを装着した状態で心肺停止に陥った場合、緊急通報してくれるなど様々な機能を組み込みはじめた。これで救われる命もあるかもしれない。普段積極的に運動をする人や健康を気にする人だけでなく、介護分野にもいずれは浸透していくのではないかと感じさせる。そうなったら日本においても巨大な市場になるはずだ。

Google が開発しているスマートウォッチ用の OS 、Wear OS 普及の障害となっているものはなにか。それを考えたとき、真っ先に上がってくるのはやはり貧弱な SoC だ。現状 Qualcomm しか Wear OS 向けの SoC を作っているメーカーがなく、その Qualcomm も本気で取り組んでいるようには見えない。

Qualcomm がこれまでリリースしたスマートウォッチ(Wear OS)向け SoC は、 Snapdragon 400 (2014年)、 Snapdragon Wear 2100 (2016年)、Snapdragon Wear 3100 (2018年)

2年おきという長いスパンで新商品をリリースしている。しかもこれらは驚くことに全部 28nm プロセスで製造されている Cortex A7 だ。そう、最新の Snapdragon Wear 3100 もだ。28nm プロセスのチップが Qualcomm から発売されたのは 2013年だ。今や一番安いエントリーモデルスマートホンにしか使われなくなった技術だ。スマートフォンよりも更に省電力性が求められるスマートウォッチの最上位モデルでこれである。

ちゃんと動く Wear OS 搭載のスマートウォッチは30,000円前後はする。30,000円もあればミッドレンジのスマホが手に入る価格になってくる。これらのスマホには 14nm プロセスで製造された Snapdragon が当然のように搭載されている。

去年末、Qualcomm はハイエンドスマホや Windows ノートPC 向けに 7nm プロセスで製造されたチップをメディアの前にお披露目したことを考えれば、いかに時代遅れかわかるだろう。

Qualcomm のマーケティング部門もさすがに手抜きがバレたらまずいと思ったのか。400 の次は Wear 2100 と製品名だけ劇的に変えてきた。しかし、これはパッケージだけ変えてチョチョイとチューニングしただけのものだということが海外の多くのガジェットファンに見抜かれ、知れ渡ってしまっている。

Snapdragon Wear のおそまつさは使っていても身にしみて感じてしまう。最上位モデルのウォッチでもアプリの立ち上がりや要の音声認識も遅い。スマートフォンを取り出したほうが早いということが多々ある。


全く進化しない Snapdragon Wear のメイン CPU と GPU

Apple は Watch に搭載されている SoC についてほとんど情報を開示しないが自社で設計している。2から3になる頃には70%の性能向上、3から4では2倍の性能向上と新しい Apple Watch が発売されるたびに Apple の SoC は目覚ましい進化を遂げている。2 の段階で 16nm プロセスのチップを搭載しているという話もテックメディアから漏れ聞く。 バッテリ容量が少なくなっているにも関わらず、可動時間がほとんど変わっていないことからもその進化が伺える。Wear デバイスに見られるようなもたつきも感じない。

方や Qualcomm は 400 から Wear 2100 まで2年を要して 25% の省電力化、Wear 2100 から Wear 3100 でおよそ50%の省電力化している……らしい。まだ手元に Wear 3100 を搭載したデバイスがないが、 Qualcomm の公式 HP を覗けば 2100 も3100 もまるっきり同じものに見えて仕方がない。

Qualcomm | Snapdragon 400 Processor
Qualcomm | Snapdragon Wear 2100 Platform
Qualcomm | Snapdragon Wear 3100 Platform

見た感じだと、LTE や 無線、Bluetooth 関係が省エネ化した以外変わった点が見当たらない。3100 で QCC1100 というコ・プロセッサが追加されたようだが性能が足りていないという問題の解決にはなっていない。要は スマートウォッチとして使わず普通の時計として使えば長持ちするようにした、という改良だ。相変わらずスマートウォッチとして使ったら1日+程度の稼働時間だろう。


Wear OS を搭載したスマートウォッチのメーカーは涙ぐましい努力をしてなんとか 独自の SoC を搭載している Apple Watch や Samsung Galaxy Watch に対抗している。二重構造ディスプレイなどの技術の盛り込みやデザインが素晴らしいものも多く、 Wear OS 自体もまだまだアプリが少ない問題もあるが洗練されてきた。SoC だけが足を引っ張っている感が否めない。標準搭載されているアプリですらもたつくのだ。 Google が watchOS のようにリッチなUIを導入できないのもこれが原因の一つだと考える。

Google がもし本気になって Wear OS を搭載したスマートウォッチを広めたいのならもっと良い SoC メーカーと提携するか Qualcomm の尻をひっぱたく説得するほかないと思う。

Android タブレットが衰退を辿ったように端末メーカーがやる気がなくす前に Google が打開策を見出すことを祈るばかりだ。

参考サイト

Ars Technica | Even with the Google/Fossil deal, Wear OS is doomed

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