Wear OS がこの先生きのこるためには

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初稿:2019年1月30日

スマートウォッチは絶対に流行らないと思っている方も結構いるだろう。しかしスマートウォッチ市場はゆっくりではあるが拡大を続けており、所有者も増えている。様々な調査結果を見る限り、大雑把なマーケットシェアは Apple 40%、 Fitbit(元Pebble) 20%、Samsung 10%、その他と言ったところだ。 Wear OS のシェアはその他に含まれるわずか10~5%に満たない。

statista – Market share of smartwatch unit shipments by vendor from the 2Q’14 to 4Q’18

スマートウォッチ自体高いポテンショルを秘めている。Apple は Watch 4 にユーザがデバイスを装着した状態で心肺停止に陥った場合、緊急通報してくれるなど様々な機能(ECG)を組み込みはじめた。これで救われる命もあるかもしれない。普段積極的に運動をする人や健康を気にする人だけでなく、介護分野にもいずれは浸透していくのではないかと感じさせる。Apple Watch のような高価なデバイスでなくともリストバンド型の安価なスマートウォッチでも実装可能な機能だ。そうなったら日本においても巨大な市場になるはずだ。

Wear OS が流行らない理由

Googleが開発しているスマートウォッチ用のOS、「Wear OS」の 普及を阻んでいるものはなにか。それを考えたとき真っ先に上がってくるのはやはり貧弱なSoCだ。現状QualcommしかWear OS向けのSoCを製造しているメーカーがなく、そのQualcommも本気で取り組んでいるようには見えない。

Qualcommがこれまでリリースしたスマートウォッチ(Wear OS)向けSoCは、Snapdragon 400(2014年)、Snapdragon Wear 2100(2016年)、Snapdragon Wear 3100(2018年)

2年おきという長いスパンで新商品をリリースしている。しかもこれらは驚くことにすべて 28nm プロセスで製造されている Cortex A7 だ。そう、最新の Snapdragon Wear 3100 もだ。28nm プロセスのチップが Qualcomm から発売されたのは 2013年。今や一番安いエントリーモデルスマートホンにしか使われなくなった製造プロセスだ。スマートフォンよりも更に省電力性が求められるスマートウォッチの最上位モデルでこれである。

性能の割に高すぎる価格も問題だ。ちゃんと動くWear OS搭載のスマートウォッチは30,000円前後はする。30,000円もあればミッドレンジのスマホが手に入る価格になってくる。これらのスマホには14nmプロセスで製造されたSnapdragonが当然のように搭載されている。なぜこれがスマートウォッチでできないのか疑問だ。

2018年末、QualcommはハイエンドスマホやWindowsノートPC向けに7nmプロセスで製造されたチップをメディアの前にお披露目した。このことを考えれば Snapdragon Wear がいかに時代遅れかわかるだろう。

Qualcommのマーケティング部門もさすがに手抜きがバレたらまずいと思ったのか。400の次はWear 2100と製品名だけ劇的に変えてきた。しかし、これはパッケージだけ変えてチョチョイとチューニングしただけのものだということが海外の多くのガジェットファンに見抜かれ、知れ渡ってしまっている。

Snapdragon Wearのおそまつさは使っていても身にしみて感じてしまう。最上位モデルのウォッチでもアプリの立ち上がりや肝心要の音声認識も遅い。スマートフォンを取り出したほうが早いということが多々ある。

全く進化しない Snapdragon Wear のメイン CPU と GPU

AppleはWatchに搭載されているSoCについてほとんど情報を開示しない。Apple Watchも2までSoCが貧弱だという批判もあった。しかし、数々のレビュアーが行っている性能比較のテストなどで代を重ねるごとに着実に進歩していってるのはわかる。

2から3になる頃には70%の性能向上、3から4では2倍の性能向上と新しいApple Watchが発売されるたびにAppleのSoCは目覚ましい進化を遂げている。2の段階で16nmプロセスのチップを搭載しているという話もテックメディアから漏れ聞く。Wearウォッチにはこれがないのだ。

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かたやQualcommは400からWear 2100まで2年を要してわずか25%の省電力化、Wear 2100から Wear 3100 でおよそ50%の省電力化している……らしい。高速化や性能向上と記載していないところが味噌だ。しかも少電力性能というものさしはだいぶメーカーのバイアスがかかっていても許されているのであてにならないのは多くの人が知るところだろう。

手元にWear 3100を搭載したデバイスがないが、Qualcommの公式HPを覗けば2100も3100もまるっきり同じものに見えて仕方がない。

Qualcomm | Snapdragon 400 Processor
Qualcomm | Snapdragon Wear 2100 Platform
Qualcomm | Snapdragon Wear 3100 Platform

見た感じだと、LTEや 無線、Bluetooth関係が省エネ化した以外変わった点が見当たらない。3100でQCC1100というコ・プロセッサが追加されたようだが性能が足りていないという問題の解決にはなっていない。要は スマートウォッチとして使わず普通の時計として使えば長持ちするようにした、という改良だ。相変わらずスマートウォッチとして使ったら1日超程度の稼働時間だろう。

最後に

Wear OSを搭載したスマートウォッチのメーカーは涙ぐましい努力をしてなんとか 独自のSoCを搭載しているApple WatchやSamsung Galaxy Watchに対抗している。二重構造ディスプレイなどの技術の盛り込みやデザインが素晴らしいものも多く、Wear OS自体もまだまだアプリが少ない問題もあるが洗練されてきた。SoCだけが足を引っ張っている感が否めない。標準搭載されているアプリですらもたつくのだ。GoogleがwatchOSのようにリッチなUIを導入できないのもこれが原因の一つだと考える。

Googleがもし本気になってWear OSを搭載したスマートウォッチを広めたいのならもっと良いSoCメーカーと提携するかQualcommの尻をひっぱたく説得するほかない。

Androidタブレットが衰退を辿ったように端末メーカーがやる気がなくす前にGoogleが打開策を見出すことを祈るばかりだ。

おわり

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参考サイト

Ars Technica | Even with the Google/Fossil deal, Wear OS is doomed

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